最も相続税の節税効果が高い「配偶者の税額軽減」
相続税において最も重要な節税方法は、「配偶者の税額軽減」です。
相続税は、基本的に世代間の相続に関して税をかけるものです。そもそも配偶者は被相続人とともに財産を形成した存在とみなされているので、配偶者が相続したときは原則として相続税がかからないようになっています。
具体的に言えば、まず配偶者の相続財産が1億6000万円までならそれに対応する税は無条件に無税です。たとえば遺産の合計が2億円の場合に、配偶者がその8割である1億6000万円以上の財産を相続すれば、その1億6000万円までは無税で、残りの4000万円だけに課税されることになります。
とはいえ、たとえば10億円の遺産があるような資産家にとっては、1億6000万円の控除は迫力不足です。そこで、もう一つの計算方法として、配偶者が相続した財産のうち「法定相続分」までは無税と定めています。
つまりこの場合であれば、5億円までが無税となります。なお、この規定はあくまで法定相続分です。子がいない場合で、夫の親と財産を分け合うのであれば配偶者は3分の2まで、夫の親もおらず兄弟と分け合う場合は、4分の3までが無税となります。何より他に法定相続人がいない場合は、法定相続分は100%となりますから、すべてを無税で相続できるわけです。
二次相続を見越し、子どもにもそれなりの資産を渡す
何やらこれは大変に気前のいい規定に見えます。しかし、安心することはできません。たいていの場合、被相続人と同世代である配偶者は、遠からずして亡くなり、二次相続(両親の残り一人が亡くなったときの相続)が起こります。この時には被相続人には配偶者はいません。つまり「配偶者の税額軽減」を利用することができません。残された相続人には一次相続で回避した分も含めて相続税がドカッとかけられることになります。
となると、一次相続でもある程度は子らに相続させる必要がありましょう。それによって、配偶者が亡くなる二次相続の際の負担を少なくしておくわけです。相続税は累進課税ですから、1回の課税対象額が多ければ多いほど税額も高くなります。二度に分けて課税されたほうが、一度に課税されるよりも税額がかなり減る仕組みになっているからです。
あるいは、配偶者がまだまだ長生きしそうであれば、相応の財産を相続した上で、その後に毎年せっせと子たちに贈与することで、二次相続の際の遺産を減らすことです。