(画像はイメージです/PIXTA)

M&Aにおける「買いニーズ探索」「買い手へのアプローチ」を難しくしている原因の多くは、「一気通貫型」を前提とした手法にあります。解決方法はあるのでしょうか。※本連載は、M&A仲介業務を行うByside株式会社の代表取締役である川畑勇人氏の著書『中堅・中小企業のM&Aを成功に導くByside FA』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

「一気通貫型」では、買い手へのアプローチ業務はわずか

買いニーズ探索や買い手へのアプローチを難しくしているのは、ほとんどのM&A仲介会社、FA事業者で、担当者が一人で受託した売り案件の買い手候補を一気通貫型で探していることが原因です。この場合、予備的な探索は契約前に行うこともありますが、本格的な買い手探しや買い手へのアプローチをするのは当然ながら売り手からの受託後になります。

 

一般的なM&A仲介会社において、1人のM&Aコンサルタントが売り手からの契約を受託できる数はかなり少なく、1年間に10件獲得できれば、かなり優秀です。経験が少ないM&Aコンサルタントなら年に1件かもしれませんし、1件も受注できないかもしれません。

 

ここから分かることは、売り手の探索や売り手へのアプローチは数百回、数千回と繰り返すのに対して、買い手の本格的な探索や買い手へのアプローチは、年に数回しか行われないということです。

 

一気通貫型を前提にする以上、1人のM&Aコンサルタントが経験している業務量としては圧倒的に売り手対応が多く、買い手探索などの対応はほんのわずかです。経験が少なければ、知見やノウハウも蓄積されにくく、習熟して得意になることが困難であるのも当然なのです。

 

このような状況にあるM&A仲介会社のM&AコンサルタントやFAに対して、今までになかった形で買い手探しのサービスを提供するのが、私たちの「買い手探し特化型」FAモデルです。

買い手探し特化型の買いFA=「Byside FA」とは?

多くのM&A仲介会社、M&Aコンサルタント、FAなどが抱えている買いニーズ探索や買い手アプローチの壁を乗り越えて、スムーズなM&Aの成約を実現するための新しいM&A支援サービスモデルが、買い手探し特化型FAモデルです。

 

買い手探し特化型FAモデルとは、「売り案件をもつM&A仲介会社または売りFAから依頼を受けて、買い手を探索して紹介する」という形の新しいM&A支援モデルです。

 

買い手企業から依頼を受けて、買い手企業のみから報酬をもらってM&A支援業務を行います。

 

つまり、買いFAの一種であり仲介ではありません。売り手側企業の案件をもつM&Aブティックからも、買い手探しの依頼を受けるという点においては、通常の買いFAと業務内容が異なります。

 

特に大企業同士の場合、これまでの買いFAはすでに候補相手が見つかっているか、絞り込まれている段階から関与します。それに対して、買い手探し特化型FAモデルでは、その名のとおり、すでに案件化されている売り案件に対して、適切な買い手を探し出してマッチングする役割も担う点が特徴です。

 

M&A仲介における買い手探しの役割と、買いFAにおける買い手に対しての助言業務の両方を担うようなイメージです。

 

買い手探し特化型FAモデルは、買いFAの一種とはいってもこれまでに存在していた買いFAとは異なる役割を担う、まったく新しい業務モデルです。これを単に「買いFA」と記載してしまうと、既存の買いFAとの区別がつかずに誤解を招くので、本連載では既存の買いFAと区別するために、買い手探し特化型FAモデルを「Byside FA」と呼ぶことにします。以降、本連載において「Byside FA」とは、買い手探し特化型FAモデルの買いFAのことを指します。

 

M&Aブティック業務におけるAPIのイメージ

Byside FAは、買い手企業から見た場合、通常の買いFAと同様にそのM&Aが自社にとってメリットをもたらすものなのか、また自社にとって最適な条件やスキームはどのようなものかを助言してくれる役割を担います。

 

[図表]「買い手探し特化型」FAモデル

 

M&Aブティックから見た場合には、〈売り手探し→案件化→買い手探索→マッチング→エグゼキューション〉という段階で進むM&Aプロセスにおいて、買い手探索とマッチングの部分と、場合によってはそれ以降のプロセスの一部もアウトソースできる相手がByside FAだというイメージです。

 

ただし、Byside FAはあくまで買いFAですから、報酬を支払う依頼者は買い手企業になります。つまり、M&Aブティックがアウトソーシング報酬や紹介料などをByside FAに支払う必要はありません。

 

その意味ではアウトソーシングというより、コンピュータシステムにおいて公開されたAPIを利用するようなイメージが実態に近いかもしれません。APIとは、異なるソフトウェアやプログラム、Webサービスの間をつなぐために、多くは無料で公開されているインターフェースのことです。APIがあることで、例えば自社のWebサイトに、無料でGoogleマップによる地図を載せるといった連携ができます。

Byside FAの具体的な流れ

Byside FAの業務の流れは次のとおりです。

 

①M&Aブティックから買い手探索の依頼を受け、ロングリストを作成

M&Aブティックがもつ売り案件に対する買い手探索の依頼を受けた私たちは、まず、自社のデータベースによるロングリストを作成します。日頃から買い手候補になりそうな企業の情報を収集、蓄積してデータベース化し、数十万件に上る買い手候補を集めた確度の高い自社データベースを構築していることが、Byside FAのポイントの一つです。

 

②買い手へのアプローチ

私たちからロングリストの提示を受けたM&Aブティックは、それを売り手に提示します。そして、売り手から提案許可をもらった企業に対して、私たちが買い手候補にアプローチします。

 

単に、売り案件の情報を右から左に流すだけではなく、買い手のビジネスモデルや財務状況を把握、理解したうえでFAとして買い手の立場に立ち、買い手のメリットを最大限追求するための助言をすることも含めてアドバイスをするという立場でアプローチするところが、M&A仲介会社や売りFAによるマッチングとの違いになります。

 

③買い手とのFA契約の締結

買い手が納得してM&Aを前向きに検討する場合、私たちとアドバイザリー契約を締結します。その後、意向表明書の提出、トップ面談など通常、仲介会社のM&Aコンサルタントが行うM&Aプロセスに移行します。その段階からは買いFAとして、クロージングまでのすべてのM&A実務について、そのプロセスをスムーズに進行させつつ、買い手の利益を最大化させるために、買い手へ助言提供や交渉などの実務の補助をします。

 

買い手の必要に応じてデュー・デリジェンス業務の提供や、資金調達に係る相談を受けることも可能です。

 

④案件を成約させるために、必要に応じて、M&Aブティックへのアドバイスも実施

M&Aブティックに対しても、成約に向けたアドバイスを必要に応じて行います。買い手の事業について、どのように売り手にアピールすれば売り手に対して強く刺さるのか、といった点についてM&Aコンサルタントや売りFAから相談されれば、それに対してアドバイスを与えたりします。

 

場合によってはM&Aコンサルタントと同行して、売り手に直接会って、買い手の魅力を伝えます。

 

 

川畑 勇人
Byside株式会社 代表取締役

 

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※本連載は、川畑勇人氏の著書『中堅・中小企業のM&Aを成功に導くByside FA』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

中堅・中小企業のM&Aを成功に導くByside FA

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川畑 勇人

幻冬舎メディアコンサルティング

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