なぜこれまでByside FAが存在しなかったのか
多くのM&A仲介会社、M&Aコンサルタント、FAなどが抱えている買いニーズ探索や買い手アプローチの壁を乗り越えて、スムーズなM&Aの成約を実現するための新しいM&A支援サービスモデルについて、本連載ではこの「買い手探し特化型FAモデル」をByside FAと呼ぶことにします。
Byside FAは、M&A仲介とも、既存の買いFAとも異なる、新しいM&A支援モデルです。これまでにも部分的に似たような業務をしているFAはいたかもしれませんが、買い手探索のみを専業としてサービス提供するFA事業者は存在しませんでした。その意味で、私たちが日本初のByside FA専門事業者だといえます。
そもそも、中堅・中小企業M&Aの市場自体が急拡大して、Byside FAへのニーズをもつM&Aブティックが急増したのはここ数年であり、それまではM&Aブティックの数も少なかったため、市場ニーズが小さすぎたという事情もあります。ですが、その業務を担える人材がいなかったことのほうが大きいかと思われます。
M&A業務において、売り手側を扱うことと買い手側を扱うことには、質的に異なる面があります。それにもかかわらず、多くのM&A仲介会社ではM&Aコンサルタントが一気通貫型で業務を担当しています。そのため買いニーズ探索や買い手へのアプローチを数多く経験することは、なかなかできません。ほとんどのM&Aコンサルタントは、買い手対応の経験値が圧倒的に少ないのです。
他方、限られた相手とのマッチングを前提に進める大企業同士のM&Aにおいて、買い手への助言業務を担当する既存の買いFAは、基本的に相手の探索やマッチングは行いません。だからこそ、買いニーズ探索や買い手へのアプローチの業務経験が豊富で、その領域に特化した知見やノウハウをもつ人材は、ほとんど存在していないのが実態です。それがこれまでByside FAというM&A支援業態が存在しなかった主な理由だと考えられます。
日本で初めてByside FA事業を開始できた「経験とデータベース」
私たちが日本で初めて、Byside FA専門という業態でサービス提供を開始できたのは、最大手M&A仲介会社の買い手担当部門で、長い間買い手探しとマッチングの経験を積んできたメンバーが独立して創業したからにほかなりません。
私は大学卒業後、大手計測制御機器会社に入り、法人営業を担当していました。その後、最大手M&A仲介会社に転職します。その会社は、売り手担当部門と買い手担当部門が、組織上完全に別部門として、独立して業務に当たっていました。M&Aコンサルタントも、売り手・買い手を一気通貫型で担当するのではなく、売り手担当か買い手担当に分かれ、分業によって業務をしていました。
私は入社直後から買い手担当部門に配属され、それから8年間、ほぼ買い手の探索とアプローチ、マッチングのみを担当し、その部門を統括していました。買い手探索業務において多くの経験を積み、実績を残してきたからこそ、現在Byside FA事業が展開できているのです。
ほとんどのM&A仲介会社で、M&Aコンサルタントは一気通貫型で案件を担当しています。分業体制を敷いている仲介会社がほとんどないので、当然のことです。そのため、私のようにひたすら買い手探索と、買い手へのアプローチとマッチングだけをやり続けてきたという経験をもつM&Aコンサルタントは、同じ最大手M&A仲介会社で一緒に働いていた当時の同僚たち以外には、ほぼ存在しないはずです。
長い間、買い手だけを専門で担当してきたという経験、そして独立後に独自の構想で構築した数十万社に上る、具体的な買いニーズをもつ買い手候補企業とデータベースと各種AIを活用したマッチングシステム、私のもつM&A業界内での同業他社とのネットワークが、私たちが日本で初めてByside FA業務を開始できた基盤となっています。
川畑 勇人
Byside株式会社 代表取締役
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