今回は、賃貸物件でAirbnbを行う際の「大家さん」との交渉術について見ていきます。※本連載は、Airbnb総合研究会代表、阿部ヨシカズ氏の著書『インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド』(ソシム)の中から一部を抜粋し、Airbnbを始める際に知っておきたい法律面・契約面のポイントや、想定されるトラブルの解決法などを紹介します。

「転貸禁止条項」に基づき、賃貸契約解除の可能性も

Airbnbで貸し出すことを想定している物件が賃貸契約で借りているものであれば、賃貸契約書の内容を確認してください。日本の業界慣習としては、ほとんどの契約書において、転貸禁止事項が盛り込まれています。外国人旅行者を自宅に泊めることが「転貸」にあたるかどうかは弁護士の間でも解釈が分かれるかもしれませんが、大家さんがゲストに転貸している、と判断すれば、この転貸禁止条項に基づき、賃貸契約の解除を求めてくる可能性もあります。

 

日本でも徐々にAirbnbにリスティングされる物件が増えてきています。かなりの割合が賃貸物件と思われますが、そのうち事前に大家さんが承認した上で登録されている物件がどのくらいあるのかについての実態は不明です。中には、部屋を友だちにシェアしているだけで禁止されている転貸行為にはあたらない、という立場をとって、大家さんには何も伝えずにリスティング登録して、部屋を貸し出しているホストも少なくないと推測されます。

 

実際にその方法で部屋を貸して、誰からもクレームがなければ何も問題はないのかもしれません。想定される最悪のケースは、大家さんには内緒で部屋の貸し出しを始めたところ、騒音やごみ処理などのクレームが近隣住民から直接大家さんに寄せられて、大家さんがその事実を知ることでしょう。

 

特に、大家さんが所有する同じマンションの住民からのクレームだった場合、大家さんにとっては見逃すことができないトラブルということになってしまいます。

 

事前に何の相談もなかったことで、「裏切られた」と感情的になる大家さんもいるでしょう。そうなると、ホスト活動を続けるどころではなく、契約違反を理由に退去を求められる事態にも発展しかねません。

 

筆者の場合、複数の物件を試験的にAirbnbで貸し出していますが、すべての大家さんに許可をもらっています。大家さんに理解してもらうには、直接会ってAirbnbのことを話すしかありません。ただし、シェアリング・エコノミーとかインターネットの新しいサービスとか、いきなり難しい話を切り出すのは逆効果になるかもしれません。まずは、こういう新しい仕組みがあって、私の住んでる部屋に友だちを呼んで、泊めてあげたいんです、みたいな話をしてみるのがいいでしょう。

大家さんとの信頼関係がAirbnb運営には不可欠

正直なところ、Airbnbのような仕組みを頭から否定する大家さんもいます。外国人を毛嫌いするケースも少なくありません。大家さんとしては、部屋の貸し出しを許可することで、同じ物件に居住する他の契約者からクレームが来るのを一番恐れます。そこで、大家さんの不安を払拭しつつ、将来、大家さんにもメリットがあるような話ができれば理想的です。このあたりは、大家さんの性格や人柄にもよりますので、こういうアプローチをすれば許可を必ずもらえるということではありません。

 

物件によっては、間に不動産会社などが運営する管理会社が入っている場合もあります。そのようなケースでは、大家さんはほとんど前に出てきませんので、交渉は少し難しいかもしれません。管理会社を通して大家さんの確認を取ってもらうこともできるかもしれませんが、管理会社は物件管理において余分なリスクが増えると判断して、大家さんには積極的に伝えない可能性が高いでしょう。

 

公営住宅や家賃補助の住宅の場合は、特別なルールが適用される可能性があります。まずは、住宅管理者に問い合わせてみることをおすすめします。

 

いずれにしても、Airbnbでホストとして活動するには、大家さんの理解が欠かせません。大家さんの許可を得ずに部屋を貸してしまうと、すでに紹介したようなトラブルが発生するリスクがあるからです。話の切り出し方は大家さんの性格によって変わってきますが、大家さんとの信頼関係を大切に考えることが大前提です。

「分譲マンション」の場合は管理組合との関係にも注意

ホストが保有する物件については、自分が大家さんの立場を兼ねますので、大家さんとの関係については存在しないことになりますが、分譲マンションの場合はマンションの管理組合との関係に注意が必要です。分譲マンションでは、通常、国土交通省が作成した標準管理規約がそのまま使われることが多く、その規約の中では、区分所有者(分譲マンションのオーナー)は「その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と定められています。

 

●マンション標準管理規約(抜粋)

第12条
区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

 

マンション管理組合に確認をせずに、ゲストに部屋を頻繁に貸し出すと、この管理規約に違反しているとみなされる可能性もあります。もちろん、「友だちを泊めているだけ」という立場を貫くことも可能ですが、同じマンションに住む人は一番身近な近隣住民ですので、事前にホストが行う内容を説明するなど、良好な関係を築く努力をしたほうがいいでしょう。

本連載は、2016年1月12日刊行の書籍『インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド

インターネット民泊仲介サービスAirbnb入門ガイド

阿部 ヨシカズ

ソシム

Airbnb(エアビーアンドビー)は主に海外からの旅行客に対し民泊の仲介を行うサービスで、日本でも急速に利用者を伸ばしています。 本書では、Airbnbしくみと現状の使われ方、副業としての可能性などのほか、旅館業法などの法…

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