(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

●内田副総裁はマイナス金利解除時の利上げ幅に触れ解除後も緩和的な金融環境維持を明言。

●YCC見直し後の国債買い入れは継続、ETFとJ-REITは終了しても保有残高は別問題との見解。

●異次元緩和は4月終了、無担保コール翌日物金利は0.0%~0.1%で年内利上げなしを予想。

内田副総裁はマイナス金利解除時の利上げ幅に触れ解除後も緩和的な金融環境維持を明言

日銀の内田副総裁は2月8日、奈良県内の経済界関係者らが参加する金融経済懇談会に出席し、最近の金融経済情勢と金融政策運営について講演を行いました。以下、講演の主なポイントを整理し、今後の金融政策を展望します。内田副総裁は、賃金上昇を伴う形での2%の物価目標が実現する確度について、不確実性はなお高いものの、「少しずつ高まっている」と述べ、その実現が見通せるようになれば異次元緩和の修正を検討すると発言しました。

 

さらに、今回は、個々の政策を修正する場合の基本的な考え方が示されました(図表1)。まず、政策金利について、現在-0.1%~0.0%で推移する無担保コール翌日物金利をマイナス金利導入前の状態(0.0%~0.1%)に戻すとすれば、「0.1%の利上げ」になると指摘し、また、「仮にマイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになる」との見方を示しました。

 

[図表1]日銀内田副総裁の主な発言骨子

YCC見直し後の国債買い入れは継続、ETFとJ-REITは終了しても保有残高は別問題との見解

次に、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)について、「この枠組みは、もともと国債買い入れによる「量的緩和(QE)」の一類型であり、廃止したらそれで終わりというものではありません」と述べました。そして、「イールドカーブ・コントロールとその後の国債買い入れの運営は連続的なもの」であるとし、YCC見直し後の国債買い入れ継続を示唆しました。

 

また、ETFとJ-REITの買い入れについては、物価目標の持続的・安定的な実現が見通せるようになり、異次元緩和を修正する時には、「やめるのが自然」と述べ、買い入れが直近で減っていることを踏まえ、買い入れを終了しても「市況等への影響は大きくない」との見解を示しました。一方、「すでに保有している残高の扱いは別の問題」とし、「非常に大きな規模ですので、時間をかけて検討していく必要がある」と説明しました。

異次元緩和は4月終了、無担保コール翌日物金利は0.0%~0.1%で年内利上げなしを予想

以上より、今回の内田副総裁の講演から、①マイナス金利解除時の利上げ幅は0.1%、解除後も緩和的な金融環境は継続、②YCC終了後も国債の買い入れは継続、③ETFとJ-REITの買い入れ終了後も保有残高は当面維持、というメッセージが読み取れます。国内市場では、修正時期は近いものの、急速な引き締めのリスクは小さいとの安心感が広がった模様で、長期金利は比較的落ち着いた動きとなり、円安、株高の反応がみられました(図表2)。

 

[図表2]日銀内田副総裁の講演を受けた市場の反応

 

弊社は日銀の金融政策について、引き続き4月にマイナス金利解除とYCC撤廃を軸とした異次元緩和の終了を予想しています。マイナス金利解除後、政策金利のターゲットは無担保コール翌日物金利となり、誘導水準は0.0%~0.1%を見込みます。利上げは年内行われず、物価動向を見極めた上で、誘導水準は2025年4月に0.25%、10月に0.50%へ引き上げられる可能性が高いと考えています。

 

(2024年2月16日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日銀・内田副総裁が示した「異次元緩和からの出口」に関する見解【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>

 

注目のセミナー情報

【税金】1月9日(木)開催
年収1,000万円以上の富裕層限定
中古太陽光発電投資の“節税”術

 

​​【資産運用】1月11日(土)開催
金価格が上昇を続ける今がチャンス!
「地金型コイン」で始める至極のゴールド投資

 

​​【海外活用】1月11日(土)開催
「世界の高利回り不動産」セミナー
「世界のビザ」最新情報も徹底解説

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧