(※写真はイメージです/PIXTA)

「自分には自信がない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。しかし、自信がないという気持ちは「さらに努力する原動力になる」とトマス氏は言います。著書『「自信」がないという価値』(河出書房新社)より、トマス・チャモロ=プリミュージク氏が解説します。

自信がある人は努力を怠る

次に、科学的な根拠をいくつかあげてみよう。

 

●依存症や心身の病気(過食症、喫煙、飲酒、ギャンブルなど)の治療からわかるのは、自信の高さが役に立つのは、実際の成功体験に基づく自信である場合に限られるということだ。

つまり、ここで大切なのは、自信が高まったことではなく、能力が高まったことのほうだ。

たとえば、誰かを説得して禁煙させようとするとき、自信を持たせるだけでは何の結果にもつながらない。しかし、その喫煙者が、タバコの本数を減らすという最初の段階をクリアできれば、その成功体験が「本当に禁煙できるかもしれない」という自信につながり、禁煙の成功にさらに近づくことができる。

 

●自信がないと、さらに多くのリソースを配分しようとする。目標を達成するために、より多くの時間や労力を費やすということだ。

そして心理学者のウィリアム・パワーズも言っているように、その結果として能力も向上する。被験者のパフォーマンスをランダムに評価することで、被験者の自信の高低を操作するというよくある手法の調査によると、自信が下がるような評価をもらった被験者は成績を上げるためにより努力するが、高評価を受けて自信が高まった人は逆に努力しなくなるという。

たとえば、イリノイ大学のダン・ストーンが行った調査では、自信が高い人は自らの能力を過大評価し、その結果、自信の低い人たちに比べて気が緩み、努力を怠るようになることがわかった。

 

●知覚制御理論など、根拠のしっかりした動機付けについての科学的な理論によると、動機が高まるきっかけは、現在の状況と、理想の状況の間にある差を認識することだ。

自信が高いと認識できる差は小さくなり、自信が低いと逆に大きくなる。そのため、自信がないほうが動機は高まるということになる。言い換えると、自信が高まるほど、自分が考える現時点での実力と、理想の状態との間にある差が小さくなり、その結果として努力を怠るようになるということだ。

自信はいわばサーモスタットのようなもので、目標を達成したことを察知する役目を果たす。本物のサーモスタットは温度調節の機能を果たし、設定した温度に達したら運転を停止する。自信もそれと同じで、目標を達成したと判断したら、そこで努力をやめてしまうのだ。そして自信のある人は、自信のない人よりも、目標達成のシグナルを出すのが早くなる。

 

以上のように、多くの科学的な調査によって、自信の低さが成長の大きな原動力になることが証明されている。実力があることが自信につながるのであり、そしてそのプロセスは、自分に実力がないことを認識し、適切な時間と労力を費やして努力することから始まる。

 

自信とはおかしなもので、自信があるとたしかに目標は高くなるが、そのための努力は逆に少なくなるという矛盾した面がある。

 

自分の能力に自信がある人は、より高い目標を掲げ、さらに自分ならその目標を簡単に達成できると考え、その結果として努力のレベルを下げることになる。

 

逆に自信がないと、そもそも高い目標を持たない可能性もあるが、むしろ高い目標を挑戦しがいがあるととらえ、動機が高まり、より多くの時間と労力をその目標に費やすことにつながる。

 

また、自分の不安な気持ちを最大限に活用し、慢心することなく成功体験を積み重ねていく。自信から生まれる安心は惰性につながり、必然的に努力が減速していくが、不安はさらなるパワーと加速につながる。

 

 

トマス・チャモロ=プリミュージク

 

社会心理学者/大学教授

 

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン教授

コロンビア大学教授

マンパワーグループのチーフ・イノベーション・オフィサー

 

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※本連載は、トマス・チャモロ=プリミュージク氏による著書『「自信」がないという価値』(河出書房新社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「自信がない」という価値

「自信がない」という価値

トマス・チャモロ=プリミュージク

河出書房新社

本書は、ロンドン大学・コロンビア大学教授にして人材・組織分析の権威が 社会心理学研究に基づき、”自信のなさ”の美点とそれらを武器にする戦略を解説する。 ・自信のある人はたいてい勘違いしている ・自信のなさはあ…

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