せっかく築いた財産も、相続でミスれば水の泡
収益不動産の相続トラブルには、大きなリスクがあります。もし相続人同士の話し合いがまとまらずに問題となれば、トラブル解決のために税理士や弁護士等の専門家を入れることになり、お金がかかりますし、相続人同士でうまく遺産分割できなければ、せっかく先代が残した資産も維持できず、結局は叩き売って現金化するしかありません。運が悪ければ、借金しか残らないということも考えられるのです。
所有者が存命中は資産が順調に増えているように見えても、承継の段階でなくなってしまえば、費やした資金や努力は水の泡です。
筆者は業務を通じ、不動産トラブルや相続問題を多く取り扱っていますが、以上のような点から、収益を保有されている方の場合、「生前対策」が極めて重要だと痛感しています。
収益不動産の保有の目的は「資産の形成・拡大」と「資産の承継」
収益不動産の保有の目的は、「資産の形成・拡大」と「資産の承継」です。よくあるのが、老後資金のためにとりあえずアパート建てておくという方法であり、実家の土地が余ってるから活用する、というケースも多くあります。そのような方は、自分の老後資金をアパートの家賃で得て、その後、子どもたちがアパートを承継すれば収入の一助となるだろうと考えています。
しかし、そこに落とし穴があります。収益不動産を建築する段階では、建築会社や不動産管理会社が親切にサポートしてくれため、問題は起こりにくいのです。ところが、承継の段階になると、親切なアドバイスをくれる人はいません。被相続人も相続人も、黙って待っているだけでは、だれも助けてくれないのです。
地道な「書類整理」「リスト作業」が極めて重要なワケ
では、無事に相続を行うためには、どんな準備をしておけばいいのでしょうか? 筆者が相談を受けたとき、まず最初に行っていただくようお勧めするのは「所有不動産リスト」の作成です。
アパートオーナーの場合は、まず不動産関係の書類をしっかり整理することからはじめます。さすがに書類が行方不明になっている方はいないと思いますが、書類ボックスなどへ適当に詰め込んだままの方は多いのです。
しかし、「リストの作成=お金を生む行為」というぐらいの認識を持つべきだといえます。なぜなら、めちゃくちゃな状態で相続人に引き渡せば、相続人は書類の整理のために専門家を頼るしかありません。筆者も仕事柄「書類の山」を手渡されることがありますが、手間が多くなるぶん、見積も高くなりがちです。きちんと整理されていれば費用が抑えられるのに、本当にもったいない話です。
書類の整理を面倒に感じる方は多いと思いますが、それ自体が経済的な効果を生む行為だと考え、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。
必須となるのは、住所地番といわれる不動産の住所以外の特定情報、売買契約書建築関係資料あたりです。購入したブランド品を売る際、購入時の箱や保証書が必要になるのと同じだといえば、わかりやすいでしょうか。不動産も、その内容を説明したものが必要だということです。
不動産の外観を見ても、構造がどうなっているか、そもそも信頼できる建物かどうかわかりません。そのため、ブランド品の保証書と同様に、どういった経緯で建てたものなのかがわかる「付属資料」を集めておくというのが基本です。
さらに、融資が残った状態で所有者が亡くなる可能性もあるので、融資関係の資料も必要です。アパート経営をする場合は、だいたい金融機関から借り入れしますので、その資料関係をとりあえず集めておくのです。「どの銀行から/いくら借りて/利率はいくらで/どういう契約内容になっているのか」といったことがわかるようにしておきます。
そして、さらにあると助かるのは、「当時の担当者はだれか」ということです。人事異動で変更となっている可能性もありますが、銀行関係の資料もしっかり取っておきましょう。
アパート経営ですから、賃借人関係の「賃貸契約書」も必要です。
昔ながらの借家によくみられるのは、契約書もなく、大家さんがなんとなく集金に足を運んでいるケースです。このような状況を放置していると、相続人は本当に大変です。少なくとも、「家賃をいくらもらっているのか」「受け取った家賃はどこに記録しているのか」を、明らかにしておくべきです。そうでないと「友達だからタダで借りていた」などと言い張られ、出ていってもらうために100万円、200万円といったお金が必要になるかもしれないのです。
オーナーの目線での「分析レポート」を作成しておく
不動産投資で資産の拡大を狙うのであれば、ご自身のあとの世代のことを考慮したうえで、「最後の仕上げ」まで行うことが大切です。その際、筆者が相談者の方に作成をご提案しているのが、オーナー目線での「分析レポート」です。
不動産投資をされてる方の場合は、物件を建築したときと運営をスタートしたときが、もっとも多く知識や情報が集積するといえます。
土地を決めて物件を建築する場合、建設会社や不動産会社の担当者とともにターゲットとなる賃借人の属性を考えます。「ここのエリアなら学生が多いからワンルームだと借り手が多いのではないか」「ここは郊外の落ち着いた土地だから、家族世帯を狙うのはどうか」ということを考え、想定し、アパートやマンションを経営しているわけです。その点を考慮せずに経営することはあり得ませんから、建築した人自身が「物件の強みを知っている」ということになります。
さらに、先祖代々の土地であれば、土地の歴史も把握しているでしょう。「この辺は農地だった」「あの家とあの家は親族でつながりが深い」「あの家とあの家は代々仲が悪い」等の事情も、不動産投資をやるうえでは意外と重要な情報なのです。
不動産を売却する際には、隣地の方との関係性で値段が上下する可能性があります。そのため、隣地との人間関係、接道・境界関係なども把握し、記録を残しておくのです。実際問題、過去に隣家と裁判をやったという場合もあります。それらを残しておけば、相続人の不動産承継も非常にやりやすくなるのです。
逆にいうなら、受け継ぐ予定の方々は、所有者の方が元気なうちにこれらをヒアリングしておくべきだと思います。そうでないと、100の価値を100発揮できないことも起こり得ます。このような細かい部分まで踏み込んで準備できれば、万全だといえるでしょう。
山村暢彦
山村法律事務所代表 弁護士
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