アベノミクスが「株価は景気の先行指標」の前提を壊した
しかし、1991年にバブルは崩壊。その後日本経済はデフレに苦しむことになりました。
こうしたなかで、2013年に第二次安倍政権は、国民の「株価は景気の先行指標」という“前提”を使って国民のデフレマインドを払拭し、デフレから脱出しようと株価対策を政策目標としたのでした。
結果、日銀黒田総裁よるマイナス金利に加え、日本株ETF(上場投資信託)を年間6兆円のペースで買い付けことを含む“異次元の金融緩和”により日経平均の上昇を図ることにしたのでした。
「法人の負担」が減る一方、「国民の負担」は増えている
また、安倍政権は法人税の減税を行いました。安倍政権下で法人税の税率は30%から20%台前半まで10%近く下がり、大企業の(資本金10億円以上)の売上高は約1割増でしたが、税引き後の当期利益は3倍となったのでした。
ファイナンス理論上、税率は企業が生み出すキャッシュフローの分配の観点で、株価を形成する主要な要素として認識されており、法人税減税は株価を上昇させる要素として大きな影響を持っているのです。
このように税負担で法人を優遇する一方で、国民負担率は上昇を続けています。個人や企業が稼いだ国民全体の所得に占める税金や社会保険料の負担の割合をいいます。
国民負担率は、1970年度に24.3%でしたが、1979年度には30%に、2013年度には40%を超え、財務省によれば2022年度の国民負担率の実績見込みは47.5%です。つまり、国民は稼いだ額の半分しか使うことができなくなっているのです。
また、冒頭で指摘したように実質賃金も下がり続けています。この背景として特に指摘したいことは、過労死防止や育児や介護との両立などを理由として残業を規制強化していったことも実質賃金の減少に大きな影響を与えていることです。
「休日」が多い日本…アメリカ人と比較して働く時間は年間200時間短い
さらに国民の祝日も増やしていることも指摘したいと思います。日本人は50年前土曜にも半日働いていましたから、休日数は約72日でした。ところが現在、土曜も休みになり、104日前後の土日の休みに祝日が16日あるのでこれを合計すれば120日が休日です。
結果、日本人の労働時間は激減しています。1960年前後に日本人の年間労働時間は2,400時間を超えていましたが、2021年度のOECDの労働時間ランキングによると、日本の年間労働時間は世界28位の1,607時間となっています。日本人は1960年代の3分の2の時間しか働いていないのです。
また、アメリカ人の労働時間は1,791時間。いまや日本人はアメリカ人よりも200時間近く短くしか働いていないのです。これでは賃金が伸び悩むのも当然です。
もちろん労働時間の減少を補い賃金の維持・上昇を図るために企業努力で生産性の向上はするべきですが、生産性向上のためのIT投資やロボット投資にも資金がかかり、費用増になります。企業がそれだけ従業員に払う原資が減るのは当然ともいえます。
結果、「株価は景気の先行指標」という“前提”が崩壊
また、先行して豊かになった層から波及して全体に波及させ経済を成長させるという「トリクルダウン」という説もアベノミクスの根拠とされました。
しかし、2014年にOECDが発表した分析によれば、所得格差は統計的にもその後の中期的な成長に悪影響を及すことが明らかになっています。
ジニ係数が OECD 諸国における過去20年間の平均的な上昇幅である3ポイント上昇すると、経済成長率は25年間にわたり毎年0.35%ずつ押し下げられ、25年間の累積的な GDP 減少率は8.5%となるとされています。
このように見てくると、アベノミクスは「株価は景気の先行指標」の“前提“で政策目標として株価を上げようとしてむしろ「株価は景気の先行指標」という”前提“を壊してしまったのでしょう。
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