フローに限界があるならストックを活かせ
フローが給与だとしたら、ストックは預金です。
たとえて言うならいまの日本は、年齢的には50代半ばで、役職定年を迎えて毎月の給与は減っているものの、これまで一所懸命に働いた結果、ある程度の個人資産を築き上げることができた、という感じでしょうか。
50代も半ばになると、そこから先、給与が大きく増えることはないでしょう。でも、だからといって落胆してはいません。何しろかなりの金額の蓄財があるのです。これを株式や投資信託で上手に運用すれば、いま、会社から支払われている給与よりも大きな投資運用益が得られるかも知れません。いまの日本は、これとほぼ同じ状況なのです。
GDPはほとんど伸びないけれども、莫大な金額の「対外純資産」を持っています。ちなみに、2023年5月に公表された日本の対外純資産は、2022年12月末時点で400兆円を超えて、過去最高になりました。正確な金額は418兆6,285億円です。
ちなみに対外純資産とは、日本の政府や企業、個人が海外に持っている金融資産である「対外資産」から、海外の政府、企業、個人が日本国内に持っている金融資産である「対外負債」の金額を差し引いて計算されます。日本の対外純資産は実に32年連続で世界一の座を守り続けています。
もうひとつのストックは、家計部門が保有している金融資産です。個人金融資産と言ってもいいでしょう。
個人金融資産の総額は、2023年3月末時点で2,043兆円あり、このうち海外に投資されている分が、前述した対外資産に組み入れられています。この重複分を外して対外純資産と個人金融資産を合わせたら、2,000兆円を大きく上回る資産を、日本という国は保有していることになるのです。
単純に考えても、日本のGDPの4倍近い資産ですから、年収4年分の貯蓄を持っていることになります。これを、これまで述べてきたような方法で有効活用すれば、日本経済は地盤沈下を防ぐことができるはずです。
これを実現させるために必要なのが、「株価の上昇が国全体、そして国民であるわたしたち一人一人にとっていい結果をもたらす仕組みを構築する」というグランドデザインを、日本国民に伝えることなのです。
松本 大
マネックスグループ会長
※本記事は『松本大の資本市場立国論』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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