(※写真はイメージです/PIXTA)

長いあいだ「リスク回避」の意識が強く、金融資産の多くを預金に置いてきた日本。そのあいだ、米国は株式投資で著しく豊かになったと、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。国外の投資家や企業から日本株に注目が集まるいま、日本が「米国流の好循環」を起こすにはなにが必要なのか、詳しくみていきましょう。

日本が“米国流の好循環”を阻んでいる「2つ」の原因

1.企業による利益退蔵

米国流の、株価上昇による資産の増加⇒消費増加⇒経済成長⇒株価上昇、という好循環が日本でも定着できるだろうか。そうなれば、日本経済と人々の生活水準を大きく引き上げていくことができる。いまの日本株ブームはその可能性を垣間見せていると考えられる。

 

これまで日本では企業は十分に利益を出しているのに株価が安いことによって家計の財産はあまり増えず、企業のもうけが経済の好循環に十分に結びついてこなかった。

 

その第1の理由は日本企業の儲けの過半が企業内に退蔵され、需要拡大と成長に繋がってこなかったことにある。米国の場合企業利益のほぼ8割が配当と自社株買いで株主に還元され(図表4)、それが家計の資産所得と株価値上がり益となって消費を支えている。

 

[図表4]米国企業部門(非金融)の利益と株主還元
[図表4]米国企業部門(非金融)の利益と株主還元

 

ちなみに米国では家計がSNSなどを通して株式投資に参入した2020年までの10年間、唯一最大の株式投資主体は企業による自社株買いであった。リーマンショック後の株高はもっぱら自社株買いによって実現したのである。(図表5)。

 

[図表5]米国主体別株式累積投資額(2009年以降)
[図表5]米国主体別株式累積投資額(2009年以降)

 

それに対して日本企業は配当と自社株買いによる株主還元率は4割と米国の半分に過ぎず、企業は利益の多くを金融資産として運用し、遊ばせている。その一部は戦略的海外投資であるが、自己資本比率は異常に高くなっている(図表6)。

 

[図表6]異常な積み上がり、日本の自己資本比率
[図表6]異常な積み上がり、日本の自己資本比率

 

金融庁・東証によるPBR1倍以下の企業に対する是正措置の要求は、企業の内部留保の有効活用を求めるものである。企業の自社株買いが増加し、ROE等資本効率が劇的に改善し、PBRが上昇すると期待される。

 

2.極端なリスク回避姿勢

第2に日本の家計がリターンの高い株式投資を敬遠してきたため、株価が上昇してもその恩恵が行き渡らず、家計の資産形成は米国に大きく後れを取ってきた。

 

しかしNISA改革などにより家計のリスクテイク姿勢が高まろうとしている。株式投資により家計の金融資産からの所得が大きく増加していくだろう。

 

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※本記事は、武者リサーチが2024年2月5日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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