「協同労働」…雇う、雇われるではない第三の働き方
2022年10月には、「労働者協同組合法」が施行されました。この法律は、「協同労働」の理念を持つ団体のうち、同法の要件を満たす団体を「労働者協同組合」として法人格を与えると共に、その設立、管理などの必要事項を定める法律です。
「協同労働」とは、働く人が自ら出資し、事業の運営に関わりながら事業に従事する働き方です。組合員はみんなフラットな関係性で、組合の「出資」「経営」「労働」のすべてを担えます。
地域社会で必要とされる仕事をすることが中心になっていますので、地域課題の解決に貢献できるやりがいを味わったり、地域の中で豊かな人間関係を広げていったりすることもできます。
法律の施行以降、約70近くの労働者協同組合が設立されています。その多くは、東京圏以外のエリアで設立されており、地方を中心に労働者協同組合設立の動きが出始めています。
なかには、高齢者の仲間同士が集まって立ち上げ、地域の高齢者が抱える課題を踏まえて仕事起こしをしている組合も出てきています。
厚生労働省 雇用環境・均等局 勤労者生活課 労働者協同組合業務室長水野嘉郎氏は、「労働者協同組合は、企業や組織の退職後の高齢期を生きがいを感じながら、これまでの経験を活かして元気に仕事をしていきたいという、シニア世代のニーズに応える、大きな可能性がある」と言います。
定年後に労働者協同組合を立ち上げるという選択肢はもちろんのこと、今後、就業規則上、副業・兼業が可能な会社に勤めている場合は、「協同労働」という働き方を選択する人も増える可能性があります。
組合員のスキル等を活かしながら、協力しあい、地域の課題解決に向かって働くというスタイルは、中高年男性のよさを新たに活かせる働き方だと感じます。
さらには、「協同労働」という働き方を通じて、さまざまな地域課題を解決する中高年男性が増えれば、協力しあうことよりも個人の評価を優先して働く傾向が強まっている日本社会の働き方について、改めて考え直すきっかけになることを期待しています。
最後になりましたが、中高年男性1人ひとりが自信をもって輝く努力を忘れず、高齢化が進む日本社会で年齢を問わず多様な人材が活躍できる会社が増え、すべての人が能力と意欲を最大限に活かしつつ協力をしあいながら働ける社会づくりに向けて取り組んでいけば、日本社会の雇用の未来は、明るくなるのではないでしょうか。
小島 明子
日本総合研究所創発戦略センター
スペシャリスト
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