定年間際に多くの人が抱く迷い
キャリアを考えなければいけないと頭ではわかっていても、日常生活に追われていると、いつの間にか時間が過ぎてしまい、あるとき、自分の人生はこれで本当によかったのか、自分のキャリアはこのままでよいのか、と迷うことは、誰にでもあるのではないでしょうか。
特に、年齢を経て、いまの勤め先で自分の将来のキャリアパスがなんとなく見えてきたタイミングで、考えることを放棄してしまったり、冷静さを欠いて突然転職をしてしまう、という方もいるかもしれません。
それはそれで1つの人生ですが、あとでふり返ってみたときに誰しも、納得のいく選択はしておきたいのではないでしょうか。
自己理解を深めるために自分の「キャリア・アンカー」を知る
産業組織心理学を専門とするシャイン博士(Edger H. Schein)は、個人がキャリアを選択しなければならないときに、絶対に譲ることができない核があるとして、それを「キャリア・アンカー」と名付けています。
シャイン博士※1によれば、「キャリア・アンカー」は3つの成分で構成されるといいます。
2.自覚された動機と欲求(現実の場面での自己テストと自己診断の諸機会、および他者からのフィードバックにもとづく)
3.自覚された態度と価値(自己と、雇用組織および仕事環境の規範および価値との、実際の衝突にもとづく)
もともとアンカーとは、船を停泊させるときに必要な錨のことです。つまり、人がキャリアを歩むうえで、譲れない、能力や欲求、価値観などによって構成された「キャリア・アンカー」が誰にでもあるということなのです。
自分の「キャリア・アンカー」は、さまざまな生活や仕事の経験などを経て発見することができるもので、かつ、今後の人生経験によっては、アンカー自体が変化することも起こります。
では、「キャリア・アンカー」には、どのような種類があるのでしょうか。
シャイン博士※2は、「キャリア・アンカー」には、8つの種類(①専門・職能別コンピタンス、②全般管理コンピタンス、③自律・独立、④が保障・安定、⑤起業家的創造性、⑥奉仕・社会貢献、⑦純粋な挑戦、⑧生活様式)があると指摘しています。
職業経験を積み重ねている方は、引用文献等で取り上げている関連書籍やインターネット等で自分の「キャリア・アンカー」を調べることができます。自分の「キャリア・アンカー」を知っておくことは、自分のキャリアを振り返るときに役立ちます。
※1 エドガー・シャイン著、二村敏子・三善勝代訳(1991) 「キャリアダイナミクス」白桃書房
※2 エドガー・シャイン著、金井壽宏訳(2003)「キャリア・アンカー 自分のほんとうの価値を発見しよう」白桃書房
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