「高学歴中高年男性」の意欲を活かせない職場環境
日本総合研究所の調査では、高学歴中高年男性に対して、就業継続に関する意思決定に影響を与える労働価値観について調査を行いました。
一般に、就業継続にあたっては、仕事に対する本人の考え方が影響すると考えられます。具体的には、「働くことによって得られる便益」と「働くことに伴う費用」を天秤にかけ、便益が費用を上回れば就業を行うという意思決定が下されるというものです。ただし、便益、費用ともその考え方は個人によって異なる主観的なものと考えられます。
「働くことによって得られる便益」は、働くことによって得られる給与所得や会社における安定的な地位の確保といった“外的報酬”と、仕事を通じて得られる自己成長や仕事そのものの面白さ・楽しさといった“内的報酬”に大別することができます。
「働くことに伴う費用」は、仕事をすることによって諦めなければならない家族・プライベートの時間といった時間に関するものに加え、仕事によって負わなければならない精神的なストレスや肉体的な疲労といったものが含まれます。これをまとめると、「働くことに伴う費用」は、“ハードワークに対する許容度合い”と言い換えることが可能です。
以上をまとめると、就業継続に関する意思決定には、「外的報酬に対する欲求」「内的報酬に対する欲求」「ハードワークに対する許容度合い」の3つの要素により構成される「労働価値観」が総合的に影響していると考えられます。
高学歴中高年男性の労働価値観
高学歴中高年男性の労働価値観に関しては、日本総合研究所が作成した9つの質問に対する回答結果から、大きく下記の4点が浮かび上がりました。
1.「外的報酬に対する欲求」に関して、出世・昇進といった役職に対する欲求は必ずしも強くないが、より高い報酬を得たいという欲求は強い傾向にあること
2.「内的報酬に対する欲求」は、外的報酬に対する欲求と比べて総じて強いこと
3.「内的報酬に対する欲求」は、就職活動時点からアンケート回答時点まで、その分布に大きな変化はみられないこと
4.就職活動時点では、ハードワークを許容できると考えている男性がそうでない男性よりもが多いが、アンケート回答時点においては、「ハードワークに対する許容度合い」が大きく低下し、ハードワークを許容できると考える男性がそうでない男性よりも少なくなる
これらをまとめると、高学歴中高年男性の自己成長ややりがいを求める意欲は強く、それは年齢を経ても変わらないことが指摘できます。ただし、年齢の上昇とともに体力が低下してしまうことなどによって、ハードワークは難しい状況が窺えます。そのため、中高年男性の意欲が低いという誤解を持たれるのは、ハードワークが難しいことに起因しているのだと考えます。
一方、同調査では、現在の職場環境に対する満足度についても調査を行っているのですが、「仕事を通じて自分の能力やスキルが活かせている」(「そう思う」、「強くそう思う」)高学歴中高年男性は約4割にとどまっています。前述したとおり、高学歴中高年男性の労働価値観において、自己成長や仕事へのやりがいを求める意欲が高いことを踏まえると、職場ではその意欲が十分活かされていない可能性があるといえます。
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