キャリアを考えるということ
私たちは「キャリア」という言葉を日ごろから用いることが多いですが、その捉え方は人によってさまざまです。働いている女性のなかには、キャリア=管理職への登用、出世・昇進と捉え、キャリアという言葉に対して抵抗感を持つ人もいます。しかし実際、キャリアという言葉は、職業や進路にとどまらず、もっと幅広い意味合いを持っているのです。
木村周氏※1は、著書のなかでドナルド・E・スーパー(アメリカの経営学者、キャリア研究者、心理学者。コロンビア大学の名誉教授。1950年代にキャリア構築や職業選択を定義付けした独自の理論「キャリア発達理論」を打ち立てた)のキャリアの定義を踏まえ、キャリアについて、
(1)人生を構成する一連の出来事
(2)自己発達の全体の中で、労働への個人の関与として表現される職業と、人生の他の役割の連鎖
(3)青年期から引退期にいたる報酬、無報酬の一連の地位
(4)(3)には学生、雇用者、年金生活者などの役割や、副業、家族、市民の役割も含まれる
と説明しています。
キャリアを考えることは、まさに人生について考えることであり、特に変化の激しい現代社会においては、長期的視野に基づき人生を考えることが求められているといえます。
求められる個々のキャリア形成支援
国内では、政府側も、個々人が自律的なキャリアを歩むうえでの必要な社会的基盤づくりを行っています。「勤労者少年福祉法等の一部を改正する法律」のなかで職業能力開発促進法が改正された際には、キャリアコンサルティングが明確に定義されました。
法改正によって、2016年からは、キャリアコンサルタントが国家資格となり、キャリアコンサルティングが提供できる専門人材の養成につなげられている。現在、キャリアコンサルタントの国家資格の保有者は約5万人を超えています。
同質的価値観に基づく旧来型の働き方が主流だった時代には、勤め先の企業の考え方に従業員が合わせるということが当然とされ、そのギャップが問題となることが少なかったといえます。しかし、中高年男性を取り巻く環境の変化を踏まえれば、中高年男性と勤め先企業間の意識のギャップを縮めることが求められます。
今後は、中高年男性はもちろんのこと、希望する従業員にキャリアコンサルティングの機会が提供され、1人ひとりのキャリアをきめ細やかに支援していくことは、従業員の意欲の維持・向上につながるだけではなく、企業の生産性向上のためにも必要であると考えます。
実際、「独立行政法人労働政策機構・研修機構」※2によれば、キャリア意識と相談内容の関連を検討した結果、現在の満足感と相談内容に関連があることが明らかになっています。
特に明確な関連がみられたのは「将来のキャリア計画」の相談内容で、過去に「将来のキャリア計画について相談した」者は、現在の「仕事上の地位」「仕事内容」「職業生活全般」のいずれの満足感について、「過去に留学・進学について相談した」者は、「収入」に対する満足感について、「満足している」あるいは「おおむね満足している」の回答が多くなっています。
個々のキャリア形成支援の一環として、キャリアコンサルティングを通じて、将来のキャリア計画や進学・留学に関する相談を行うことは、働く人の満足度を上げる一定の効果があるといえます。
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