(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの人が頭を悩ませる「親の介護」問題。過去内閣府が行った調査(高齢社会白書:平成30年)では、73.5%が自宅での介護を望む一方、介護する側の負担も大きいことから、近年「老人ホーム」など介護施設を利用する人も増えています。しかし、介護施設も「入所さえできれば安心」とは限りません。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、事例をもとに高齢者施設を選ぶ際のポイントを解説します。

要件に当てはまれば「要介護1~2」でも特養に入居可能

3.要介護1・2の特例入所の確認

不服申し立てや区分変更申請をしても要介護3以上にならず、要介護2と確定した際には、「特例入所」の要件を確認しましょう。下記の要件に当てはまる場合、要介護1や2であっても特養に入所することが可能です。

 

①認知症で日常生活に支障をきたすような症状が頻繁にみられる。

②知的障害・精神障害などがあり、日常生活に支障をきたすような症状が頻繁にみられる。

③家族などから深刻な虐待が疑われ、心身の安全の確保が困難な状態である。

④単身世帯であり、同居家族が高齢または病弱であるなど家族からの支援が期待できず、かつ地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分である。

 

今回の事例の場合、Aさんのお母様は、認知症や知的障害などは発症しておらず、Aさんは虐待どころかいつも献身的に母親の介護をしていたため、特例入所の条件を満たすことはできません。

 

そのため、先述の不服申し立てや区分変更申請をしても要介護3以上の判定を受けられなければ、自宅で介護をするか、もしくは他の高齢者施設の利用を検討しなければなりません。

 

4.在宅介護の検討

特養を退去せざるを得ない状況となった場合には、Aさんの負担を減らすため、訪問介護や訪問入浴、デイサービスなどの在宅で利用できる介護サービスを検討するといいでしょう。

 

上記のような介護サービスに加え、宅食サービスを利用するなど、Aさんが仕事をしているあいだに母親の様子を見てもらえるように工夫すれば、Aさんがすべてを担っていたときに比べればいくらか負担を軽減することが可能です。

 

介護サービスの利用にあたっては、ケアマネージャーと打ち合わせを行い、母親の現状に合わせてAさんご自身の悩みも素直に伝えましょう。介護離職はリスクが大きいため、介護サービスの力を借りて介護離職を避けることが理想です。

 

5.入所施設の検討

自宅での介護が難しい場合や、資金に余裕がある場合、民間の入所施設を利用するという選択肢もあります。

 

施設に入所すれば、これまでどおりAさんは仕事に専念することができます。ただ、安易に利用してしまうと介護の長期化で資金が底を尽きてしまうことがあるため、毎月かかる費用と手持ちの資産と収入を確認したうえで、資金計画をしっかりと練る必要があります。

施設選びの際に大事にしたい「5つ」のポイント

高齢者施設を選ぶ際は、下記のポイントに着目するといいでしょう。

 

1.日々を快適に過ごせるのか?

2.終の棲家になるのか?

3.退去しなければならない条件は?

4.医療機関との提携はあるのか?

5.家族との面会は可能か?

 

施設によっては入居時に多額の一時金が必要なことがあります。そのため入居してから「こんなはずではなかった」と別の施設へ転居しようとすると、思わぬ費用が発生します。

 

入居前には施設の見学や体験入居を行い、自分に合っているか、病気や障害があっても最後まで過ごせるのか確認をしておきましょう。またこの際、「医療機関との提携の有無」の確認はとても重要です。

 

またAさんとお母さまのように親子関係が良好な場合は、「夜間や土日の面会が自由にできること」や「Aさん(子ども)の自宅から近場にあること」などもポイントになります。

 

介護の問題はいずれ多くの方が経験することですが、いつやってくるかわかりません。したがって、いざというときに慌てないよう、介護サービスや施設などの情報を事前に収集しておきましょう。

 

また自分ひとりで調べるのには限界がありますから、早めに専門家であるケアマネージャーや地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

 

 

武田 拓也

株式会社FAMORE

代表取締役

 

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