「財産価値」という物差しで考えてみる―空き家にかかる譲渡所得の「3000万円の特別控除」のメリットを見逃すな
財産価値として金額に置き換えて考えるといいでしょう。「この時点で一番お金として残るのは?」という基準で考えるわけです。
今回は、もし3000万円の特別控除が使えるなら、売却するのが一番お金が目減りせずに相続人に入ることになります。一般的な売却なら、売却価格の20%ほどが譲渡税として課税されます。
たとえば、竹本さんが売却するなら、1800万円くらいかなと言っていたので、数字でざっくり計算すると、建物解体費や測量費、売買手数料などの売却諸経費を引いて1500万円(譲渡所得)が残ったとしましょう。一般的な(長期譲渡)で特例を使わない場合は、1500万円なら300万円ほどの税金がかかります。1200万円ほどの手残りです。
でも、特例適用なら、その課税所得が3000万円までかかりません。
手元には1500万円ほどの手残りです。ということは、300万円ほどが余分に手元に残るわけです。
例えば、賃貸で毎月の5万円の家賃で貸せるとすると、節税分300万円でさえ賃料収入で得るのに5年間かかってしまいます。長期の賃貸経営を続けないと、なかなか売買で得られるような金額にはたどり着きません。
では、住む場合はどうでしょう。
自分が住めば、現在住んでいる家賃や住宅ローンの負担も減りますので、これも金銭的なメリットは出ますが、やはり売却のように一気にまとまった資金にはなりません。
特に、今回の相続人の3000万円の特別控除を受けられる場合は、一度誰かに賃貸してしまうと認められません。ここは、重要ポイントです。絶対に忘れないでください。相続したら誰にも貸さずに売却に回すのが一番優先的な対処法です。
まずは、「売り」に出してみる「3000万円の特別控除」という特例が続く限り、親が住んでいた家は、1981(昭和56)年6月までに建築されたものなら、とにかく売却から検討してください。
ここまで、なるべく、竹本さんが判断しやすい、数字を当てはめてお話ししてきました。
おそらく、竹本さんのご両親からすれば、財産として子供たちに自宅を残したのですから「住んでもらいたい」との考えもあるでしょう。ただ、財産として、これからの世代の人(竹本さんやそのお子さん)にとって有効に活用してもらえたら、それでいいと思うのが親心というものです。
そうであれば、相続人の皆さんが親の残した財産を最大価値化すれば、亡くなったご両親もきっと喜んでくれるはずです。ですから、「3000万円の特別控除」(昭和56年5月末までに建築されたものが対象)という特例が当てはまるときは、とにかくまず売却から考えることで、あなたの手取り金額を最大化できます。