少子高齢化社会では長期的に賃貸需要は減少
アパート・マンション経営は、相続税対策として有効ですが、「落とし穴」もあります。
【賃貸経営の落とし穴】
•空室が多いと家賃収入が見込めない
「自分の土地を守りたい」「自分の土地を手放したくない」「自分の土地に愛着がある」という理由から、多くの地主は、「自分の土地」にアパートを建てたがります。ですが、その土地が賃貸経営に適しているとは限りません。
「駅から近い」「商店街やショッピングモールがある」「交通の便が良い」など、十分に入居者が見込める場所であればいいのですが、「駅から離れている」「交通の便が悪い」「ラブホテル街にある」「お墓の近くにある」など、周辺環境の悪い場所に建っていると、空室率が高くなる可能性があります。
また、少子化傾向は今後も続くことが予想されていますから、長期的に考えると、入居者が減っていくことはあきらかです。
「自分の土地に新築の物件を建てたい」という地主の気持ちもわかりますが、立地が良くないのなら、「入居率が悪くない中古の物件」を購入するほうが、確実に家賃収入を見込めるでしょう。
•入居者が少ないと、借入金の返済ができない
アパートを建築する場合には、返済期間の長い大きな借り入れをすることになります。将来にわたって借入金を返済していけるのかどうか、しっかり検討することが大切です。
家賃収入でローンの返済をしようと計画しても、入居者がいなければ返済できず、負債だけが残ってしまいます。
現金化に時間がかかる「物件付きの土地」
•現金化に時間がかかる
相続税対策として、所有している「すべての土地」にアパート・マンションを建てようとする人がいます。
ですが、土地は、建物が建ってしまうと売りにくくなるので、「すべての土地」に賃貸物件を建てるのは、リスクが大きい。
相続が発生した場合、遺族が相続税を払うときに現金を持っていないと、「土地を売って現金をつくろう」と考えます。けれど、物件が建っていると買い手を見つけるのに時間がかかります。
また、借入金の抵当権がついていると売却できませんし、売却できたとしても、借入金の返済で納税分がなくなってしまうケースがあります。
•「家賃保証」を鵜呑みにできない
アパート・マンションの新築に際し、空室時の「家賃保証」をしてくれる管理会社があります。たとえ空室でも毎月の家賃を保証するしくみです。
空き室にかかわらず「毎月家賃が入ってくる」というメリットがある一方で、定期的に「賃料の見直し」があるので、そこで減額される可能性があります。
物件を建てても、相続税対策にならなければ、意味がありません。
アパート・マンションの新築を検討する場合は、土地周辺にある他のアパート・マンションの入居率や空室率を調べて、利回り(支出に対する利益の割合)をきちんと計算し、「家賃保証会社に頼らなくても家賃回収ができるか」を試算する必要があるでしょう。