③集中投資を推す声の背後にある「生存者バイアス」に注意
先ほど、集中投資よりも分散投資の方がお勧めであると申し上げました。
もちろん、ハイリスクを取ってでも一気に資産を増やしたいというのであれば、分散投資よりも集中投資の方が有効であることに異論はありません。
投資で財をなした人が、自身の体験をもとに「株式投資で成功したいのであれば集中投資をするべきだ」と話をしているのもよく見かけます。
しかし、それらの話には生存者バイアスがかかっていることを忘れてはいけません。生存者バイアスは認知心理学の用語で、成功した人物・物事のみに注目し、失敗したものを顧みないことを意味します。
生存者バイアスの例として、ウォールドによる第二次世界大戦時の戦闘用飛行機の分析が挙げられます。アメリカ軍が戦闘から帰還した飛行機を調べたところ、コックピットとエンジンには弾痕が無かったことから、海軍分析センターの研究者は、コックピットとエンジン以外の装甲を強化すべきだ、と主張しました。
しかし、ウォールドはそれと逆に、コックピットとエンジンこそ強化すべきだ、と主張をしました。コックピットやエンジンに被弾した機体は、それが致命傷で帰還できなかったためだろうと推測されたためです。
集中投資によって一気にお金が増えた、と成功箇所のみがよくクローズアップされますが、それらの集中投資による成功の陰に、一気にお金を失ってしまった無数の失敗者がいるということも忘れてはいけません。
④投資の神様バフェットの視点
それでは分散投資と集中投資について、アメリカの著名投資家であるバフェットはどのようなスタンスを取っているのでしょうか。
『株で富を築くバフェットの法則』の著者であるロバート・G・ハグストロームは、これに関して次のように述べています。
一方で、バフェット自身は2013年、バークシャー・ハサウェイの株主への手紙の中で次のように述べています。
これら2つのコメントから、バフェットは分散投資と集中投資について、次のような考えを持っているのではないかと推測されます。
「投資を生業としているプロの投資家であれば、集中投資により資産を増やしていくことが望ましい。しかし、プロではない一般の個人投資家であれば、過度なリスクを取らず、幅広く分散投資を行うのがよいだろう」
プロの投資家として、確実に利益を出すことができるのであれば、集中投資の方が良いパフォーマンスを生み出すことができるのかもしれません。しかし、プロの投資家と言えるほどの知識、経験、時間、自信がないと言うのであれば、分散投資をしてリスクを下げることによって、より堅実に資産を増やしていく方が望ましいのではないかと考えます。
⑤時間分散によるメリットも
投資を時間軸で考える場合においても、私は株を一度にまとめて買うよりも、分散して買うことをお勧めします。
株を一度に買ってしまうと、その後全体的に株価が下がったときや、新たに将来有望な銘柄が見つかったときなど、持っている株を売らない限り、新たに株を買い付けることができなくなってしまうからです。
その他、投資信託などを積立買付けするときは、安値時において購入数量が増え、高値時において購入数量が減るため、平均取得単価を抑える効果も期待することができます。
いずれにしても、余力を残しながら投資時期を分散させることで、相場の変動時などでも臨機応変に対応できる状態にしておくのが望ましいかと考えます。
低リスクで確実に資産を増やすなら「分散投資」
ここまで、分散投資と集中投資についてお話をしてきました。
もちろん、いつまでにいくらお金を増やしたいのか、どれだけリスクを取ることができるのかなど、投資をする人の事情・状況によって、どの手法を取るべきかは変わってきます。
しかし、もしできる限りリスクを下げ、確実に資産を増やしていきたいと考えるのであれば、集中して投資をするよりも分散して投資をする方が、その目的の達成確率は高まるかと思われます。
なのなの
サラリーマン兼業投資家
※本記事は『月41万円の“不労所得”をもらう億リーマンが教える 「爆配当」株投資』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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