藤原道長「一晩中、泣きながら貴女の部屋の戸を叩いていました」――パワハラ&セクハラ道長の“恨み節”に、紫式部が返した「ひと言」

藤原道長「一晩中、泣きながら貴女の部屋の戸を叩いていました」――パワハラ&セクハラ道長の“恨み節”に、紫式部が返した「ひと言」
※画像=国立国会図書館「国立文化財機構所蔵品統合検索システム」(https://jpsearch.go.jp/item/cobas-158927?info)を抜粋して作成

藤原道長と紫式部はどんな関係だったのでしょうか? 道長は紫式部をスカウトした人物であり、紫式部に『源氏物語』を書く時間と金銭的余裕を与えたパトロンだった…というのは史実として有名ですが、他に「男女の仲だったのではないか?」という説もあります。両者の間で実際に交わされた“やり取り”などから考えてみましょう。板野博行氏の著書『眠れないほどおもしろい紫式部日記』(三笠書房)より一部を抜粋し、解説します。

<前回記事>
藤原道長「この世をば わが世とぞ思ふ」…“エラソーな和歌”を詠んでしまうのも〈納得〉のワケ

道長、真夜中の電撃来訪…これって今ならパワハラ&セクハラ!?

ある夜のこと。紫式部の寝ていた部屋の戸を激しく叩く人がいます。あまりの恐ろしさに放っておいたところ、その翌朝、道長から、

 

-------------------------------------------

【夜もすがら 水鶏(くいな)よりけに なくなくぞ まきの戸ぐちに たたきわびつる】

(⇒訳:一晩中、私は水鶏が鳴く以上に泣きながら貴女の部屋の戸を叩いて嘆き明かしたことだ。)

-------------------------------------------

 

という歌が贈られてきました。紫式部は負けじと返歌します。

 

-------------------------------------------

【ただならじ とばかりたたく 水鶏ゆゑ あけてはいかに くやしからまし】

(⇒訳:普通じゃない勢いで戸を叩く貴方のことゆえ、もし戸を開けてしまったらどんなにか後悔したことでございましょうね。)

-------------------------------------------

 

紫式部が戸を開けてくれなかったことに恨み節の歌を贈る道長、それに対して紫式部は「ただならじ」の歌を返しました。現代ならパワハラかセクハラで訴えられそうな道長の行動ですが、果たしてこれで道長は紫式部のことを諦めてくれたのでしょうか?

紫式部が「道長からの誘い」を断るのは当然

当時、女房の局(つぼね。部屋のこと)を男性貴族が訪れることは日常茶飯事でしたが、なにせ相手は今をときめく道長です。ここで紫式部が道長を部屋に入れてコトを起こせば、どう隠そうとも皆に知れ渡ってしまって一大スキャンダルとなること必至です。

 

中宮彰子や道長の正室倫子、そしてせっかく仲良くなった同僚女房たちに対してどう言い訳したものか…紫式部がそう考えて道長からの誘いを断るのは当然でしょう。

 

ただ、一度は断ったとしても、最後まで道長からの誘いを断り続け(られ)たのかどうかは不明です。南北朝時代の公家系譜の集大成である『尊卑分脈(そんぴぶんみゃく)』には、「紫式部は藤原道長の妾(しょう)」と書かれています。

 

「道長と紫式部は男女の仲だった」…現代なら週刊誌が飛びつき、ワイドショーで連日放送されそうなビッグニュースですが、その可能性はかなり低いと思われます。でも、一度くらいは何かあってもおかしくはない関係ですね。

 

 

板野 博行

岡山朝日高校、京都大学文学部国語学国文学科卒。ハードなサラリーマン生活から、予備校講師に転身。カリスマ講師として、全国の生徒に向けての講義や参考書を執筆。『紫式部日記』の中で好きな女房は「和泉式部」、好きな男性貴族は「藤原実資」。

著書に、『眠れないほどおもしろい源氏物語』『眠れないほどおもしろい百人一首』『眠れないほどおもしろい万葉集』『眠れないほどおもしろいやばい文豪』『眠れないほどおもしろい徒然草』『眠れないほどおもしろい平家物語』『眠れないほどおもしろい吾妻鏡』『眠れないほどおもしろい日本書紀』『眠れないほどおもしろい徳川実紀』『眠れないほどおもしろい信長公記』(以上、三笠書房《王様文庫》)の他、多数。

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

■入所一時金が1000万円を超える…「介護破産」の闇を知る

 

■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走

 

 

注目のセミナー情報

【資産運用】5月8日(水)開催
米国株式投資に新たな選択肢
知られざる有望企業の発掘機会が多数存在
「USマイクロキャップ株式ファンド」の魅力

 

【国内不動産】5月13日(月)開催
銀行からフルローンを引き出す「最新不動産投資戦略」
利回り7%超!「新築アパート投資」セミナー
~キャッシュフローを最大化させるためのポイントも徹底解説

 

【国内不動産】5月16日(木)開催
東京23区×新築×RC造のデザイナーズマンションで
〈5.5%超の利回り・1億円超の売却益〉を実現
物件開発のプロが伝授する「土地選び」の極意

※本連載は、板野博行氏の著書『眠れないほどおもしろい紫式部日記』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

眠れないほどおもしろい紫式部日記

眠れないほどおもしろい紫式部日記

板野 博行

三笠書房

【2024年NHK大河ドラマで話題!】 今をときめく『源氏物語』の著者として女房デビュー! 仕えたお方は、あの藤原道長の娘、中宮彰子。内気な紫式部を待ち構えていたのは、先輩女房たちの冷たい視線…。 中宮彰子の出産…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧