49歳・長男の嫁「なにかの間違いでは」…税務調査官が〈毎年110万円の生前贈与〉に追徴税を課したワケ【否認されないためのポイントを税理士が解説】

49歳・長男の嫁「なにかの間違いでは」…税務調査官が〈毎年110万円の生前贈与〉に追徴税を課したワケ【否認されないためのポイントを税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「毎年110万円以内の贈与」が、非課税かつ申告不要であることは広く知られています。しかし、制度をきちんと理解していなかった結果、時間が経ってから贈与を受けた人に“思わぬ悲劇”が起きることもあるのです。では、生前贈与が否認されないためにはどのような点に注意しなければならないのでしょうか。多賀谷会計事務所の現役税理士・CFPの宮路幸人氏が、事例を交えて解説します。

Aさんへの生前贈与が否認されたワケ

Aさんの夫が相続税の申告書を作成した際、添付書類として遺言書を添付のうえ、申告書を提出しました。

 

ここで遺言書の「Aさんに伝えると遠慮されると思い伝えていないかったこと」が税務署から問題視され、税務調査が入ることとなったのです。

 

そして税務調査で

 

■Aさんに対するこの生前贈与は贈与の実態がないため認められない

■この預金通帳の2,200万円はAさんのものでなく、あくまで義父の名義預金となるため相続税の申告に含めて計算する必要がある

 

と指摘を受けました。その相続税の追徴税額は300万円のほか、ペナルティとして「加算税」と「延滞税」も加えて課されることとなってしまいました。

 

贈与がこわいのは、被相続人が「亡くなってから」

実は、贈与は生きているうちはあまり問題となりません。税務署も個人の通帳の資金の流れまではいちいち把握はできないためです。

 

しかし、亡くなったときに相続税の申告をする際、過去に子や孫に対する贈与をしていた場合については注意が必要となります。

 

相続税の税務調査の際、税務署は故人の通帳の動きについて、おおむね亡くなる前10年分ほどを把握してから税務調査に伺います。このため、100万円単位の大きな資金移動がある場合は、子や孫たちに対する贈与ではないか? 名義預金ではないか? などと想定し、税務調査が行われることとなります。

生前贈与が否認されないための注意点

では、生前贈与を検討する際は、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

 

①贈与契約書を作成する

生前贈与が成立するための要件としては、贈与者が「この財産をあげます」受贈者が「この財産をもらいます」という両者の意思の合意が必要となります。

 

贈与契約は口頭でも成立しますが、この証拠を後日証明するため、贈与者と受贈者が署名押印した贈与契約書を作成しておきましょう。できれば公証人申告役場で確定日付をとっておくと、より証拠力が高まります。

 

②贈与の証拠を残す

現金で受贈者に渡してしまうと客観的な証拠が残らないため、銀行振り込みにより行いましょう。振込であれば、振込者が通帳に印字されるなどの証拠が残ります。

 

③通帳は贈与を受ける側が管理する

通帳は贈与を受けた人に管理させましょう。贈与者が通帳・印鑑を管理していると、受贈者が自分で使えないため、贈与とみなされなくなる可能性があります。

 

また、あえて110万円を超える贈与を行い、贈与税の申告と納税を済ましているから私は大丈夫だ。とも思わないでください。申告を行っている場合であっても、贈与者と受贈者の合意がないなど、贈与の実態がない場合は、やはり否認されることとなります。

 

加えて、毎年100万円の贈与を10年間行った場合であっても、これは最初から総額1,000万円の贈与をする約束であったとする「定期贈与」とみなされた場合、1,000万円に対し贈与が課されるため注意が必要です。

 

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