調理師学校に通うも特別な興味は持てず
「自信を持つために、環境を変えたかった」「新しいことに挑戦し、引っ込み思案なところを変えたかった」。愛知県出身の三沢はるかさん(仮名、25歳)がリゾートバイトにチャレンジした目的は、若いうちにこれまでと違う環境でたくさんの経験をすること、そして自分に自信を持つことでした。
三沢さんは愛知県出身。調理師の専門学校を卒業し、東京都のアジア料理店などで調理補助やホールスタッフとして働きました。しかし、調理師の免許を取ったのは高校卒業時に「手に職をつけなければいけない」と考えたから。学校に通っても料理に特別な興味を持てないままでした。「学校で人間関係が悪いわけではなかったが、今一つ馴染めなかった。『早く卒業したいな』と思っていた」と振り返ります。
「私なんか」自信を失っていた自分を変えたい
三沢さんは、幼いころから引っ込み思案な性格だったそうです。「勉強もスポーツも、ほかの家族は能力が高く、自分はとても及ばないと自信をなくしてしまった」と言います。自信を失っていく中で、何をするにも「私なんかじゃ無理ではないか」と思い込むようになってしまいました。
悩んだ末に考えたのが、住んだことのない土地で色々なことを経験してみることでした。当時は22歳。「若いうちにまずはチャレンジしてみよう。そうすれば、少しは自信を持てるかもしれない。自分を変えたい」。三沢さんは、住んだことのない土地で働けるリゾートバイトの求人をインターネットで探し始めました。
箱根芦ノ湖の旅館の女将との出会い
たどり着いたのは複数のサイト。このうち担当者が何度もわかりやすい説明をしてくれたダイブ社を選びました。希望の条件を伝え、2022年の静岡県・伊豆高原を皮切りに神奈川県の箱根芦ノ湖、箱根湯本、箱根とこれまでに4ヵ所のリゾートバイトを経験しました。
なかでも印象に残ったのが、箱根芦ノ湖の旅館での仕事です。特に50代半ばの女将、山根千里さん(仮名)は娘のようにかわいがってくれました。若いスタッフが三沢さんしかいなかったことから、山根さんには本当の娘のように感じたのかもしれません。仕事を丁寧に指導してくれ、休日には買い物にもよく連れて行ってくれました。
とはいえ、女将は猫かわいがりをしたわけではありません。「時には厳しく指導し、優しくフォローもしてくれるなど、メリハリをつけてアドバイスしてくれた」と三沢さんは振り返ります。長い時間、一緒にいる中で内気な三沢さんも少しずつ打ち解けて話せるようになりました。
女将は旅館の休館日には時々、車で小田原市までランチに連れて行ってくれました。心を許せるようになったためか、食事をしながら三沢さんが「自分に自信がない」「兄弟姉妹には能力が及ばない」などと弱音を吐いたこともありました。
そんな時、女将はいつも「あなたは大丈夫。心配しなくても大丈夫」と励ましてくれました。「あなたは我慢してしまうことが多いから、きちんと自分の意見を伝えた方が良い」などと具体的なアドバイスもくれました。
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