簡略化され、透明性も増している入札
この15年ほどで、入札にまつわる状況は劇的に変わりました。
ここまで読んできた読者の皆さんには、新しい時代の入札がどんなものか、少しイメージが浮かんできたかと思います。今の入札は簡略化が進み、透明性が増し、広く門戸が開かれ、つまり、誰でも平等に参加できるようになったということです。
以前と比べてどう変わったのか、もう一度ここでまとめてみましょう。
①電子入札ができるようになりました
紙入札のみだった頃には、企業の入札業務担当者は案件の公表、公告を官庁の掲示板に毎日のように確認に行っていました。説明書を入手するにも、官庁までわざわざ出向いていました。
入札は所定の日時に入札室に集合しておこなうのが一般的で、開札も入札事業者立ち会いのもとでおこなわれました。そして、落札結果が公示される際も、官庁の掲示板を確認に行く必要がありました。
何度も足を運ばなければならないため、首都圏の会社以外は入札しにくく、人の移動にともない膨大なコストや時間がかかりました。そのため、どの企業でも入札専門の担当営業を置きました。
会場で入札業者同士が何度も顔を合わせるため、談合をおこなう機会が作られやすいといわれてきました。また、手続きの不透明さが指摘されてきました。
けれども今は、電子入札が一般的になり、受注側では入札に関して大幅にコスト削減が可能になりました。官公庁、自治体、独立行政法人、特殊法人(NHK、JRAなど)などが、それぞれインターネットで発注予定情報の公表、公告をおこなうようになりました。
また、入札情報サービスなどを利用すると、簡単に検索できるようにもなりました。また、入札説明書、仕様書などが簡単にパソコンでダウンロードできるようになり、案件の詳細の確認が容易になりました。それにより、案件を絞りこむこともスピーディーにできます。
入札者からの質問も期間中にメールなどでおこない、返事はメール、もしくはインターネット上で公表されます。落札結果もインターネット上で公示されるようになり、国民への透明性の確保という意味でも、革新的な進歩をとげているといえます。
②全省庁統一資格の申請制度ができました
以前は、各省庁の案件に入札するためには、それぞれの省庁の入札資格を取る必要がありました。現在は、全省庁統一資格を取れば、すべての省庁の案件が入札できるようになります。これによって、資格取得のハードルが一気に下がりました。
具体的な資格の取り方、手順については次の第2章と巻末の応用編で詳しく解説しますが、インターネット上での1時間程度の入力と、必要書類を送るだけで、簡単に資格を取ることができます。
インターネットですべてを完了しようと思うと、必要書類をあらかじめ準備してPDFにしておく必要がありますが、確定申告をしている法人や個人事業主で、税金の滞納がなければ、ほぼ資格は通ります。もちろん、インターネットで入力だけをして、必要書類はあとから郵送することもできます。
談合している暇はない!? 日々公告される様々な案件
③入札される案件の種類が多岐にわたるようになりました
以前は入札といえば、建設工事など、大企業でなければとても落札できない案件がほとんどでした。しかし、最近では実に多種多様な案件があり、小さな企業でも個人事業主でも入札できる案件が増えています。
たとえば、おにぎりやお弁当などの食品や、マスク、トイレットペーパー、コピー機・プリンターのインクやトナー、封筒など日常的に使う消耗品は、中央省庁、全国の地方自治体、外郭団体等、5000以上の発注元から毎日大量の入札案件が発信されています。
こうした「物品」だけではなく、たとえばネットワーク構築や施設の床面清掃、官公庁が主催するイベント運営など、事業として提供されるサービス、いわゆる「役務」の委託案件も同様に多数公告されています。
これらの案件が毎日どんどん流れてきますので、イメージはいわば「回転ずし」のようなものです。一つ一つの案件について、昔のドラマのように談合云々をやっていてはさばききれない数になっています。
けれども、このようにさまざまな入札案件があることを知っている人は、まだ少ないので、ブルーオーシャンな領域だといえるのです。入札は、今はまだ知る人が少ない穴場の釣り場のようなものです。