業務委託などで外注費が発生している場合でも、税務調査で外注費が否認されてしまうケースがあることをご存じでしょうか。 本記事では、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)から、事例をもとに外注と給与に関するエビデンスについて解説します。

弁護士の顧問料が「外注費」と認められた事例

〇給与所得の意義に関する裁判例3

 

最高裁昭和56年4月24日判決(税務訴訟資料117号296ページ)
TAINSコードZ117-4787

 

判決要旨

判示事項:事業所得と給与所得の判別基準

 

およそ業務の遂行ないし労務の提供から生ずる所得が所得税法上の事業所得(同法27条1項、同法施行令63条12号)と給与所得(同法28条1項)のいずれに該当するかを判断するに当たっては、

 

租税負担の公平を図るため、所得を事業所得、給与所得等に分類し、その種類に応じた課税を定めている所得税法の趣旨、目的に照らし、当該業務ないし労務及び所得の態様等を考察しなければならない。

 

したがって、弁護士の顧問料についても、これを一般的抽象的に事業所得又は給与所得のいずれかに分類すべきものではなく、その顧問業務の具体的態様に応じて、その法的性格を判断しなければならないが、その場合、判断の一応の基準として、両者を次のように区別するのが相当である。

 

すなわち、事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、

 

これに対し、給与所得とは、雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。

 

なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。

 

勤務形態に関する定めもなければ、休暇手当の支給もなかった

判示事項:弁護士の顧問料収入が事業所得に該当すると認定された事例

 

原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人は弁護士であり、昭和42年ないし同44年当時、自己の法律事務所を有し、使用人を4人ないし6人(うち家族使用人2人を含む。)を使用して、

 

特定の事件処理のみならず、法律相談、鑑定等の業務もその内容として、継続的に弁護士の業務を営んでおり、

 

各会社と上告人との間の本件各顧問契約はいずれも口頭によってなされ、この契約において上告人は右各会社の法律相談等に応じて法律家としての意見をのべる業務をなすことが義務づけられているが、この業務は本来の弁護士の業務と別異のものではない。

 

右各顧問契約には勤務時間、勤務場所についての定めがなく、この契約はその頃常時数社との間で締結されており、特定の会社の業務に定時専従する等格別の拘束を受けるものではなく、

 

この契約の実施状況は、前記会社において多くの場合電話により、時には右会社の担当者が上告人の事務所を訪れて随時法律問題等につき意見を求め、上告人においてその都度その事務所において多くは電話により、

 

時には同事務所を訪れた右担当者に対し専ら口頭で右の法律相談等に応じて意見をのべるというものであって、上告人の方から右会社に出向くことは全くなく、右の相談回数は会社によって異なり、月に2、3回というところや半年に1回、1年に1回というところもある。

 

右会社はいずれも本件顧問料を弁護士の業務に関する報酬に当たるものとして毎月定時に定額を、その10%の所得税を源泉徴収したうえ上告人に支払っており、右顧問料から、健康保険法、厚生年金保険法等による保険料を源泉控除しておらず

 

上告人に対し、夏期手当、年末手当、賞与の類のものを一切支給しておらず、したがって、雇傭契約を前提とする給与として扱っていない。

 

右の事実関係のもとにおいては、本件顧問契約に基づき上告人が行う業務の態様は、上告人が自己の計算と危険において独立して継続的に営む弁譲士業務の一態様にすぎないものというべきであり、

 

前記の判断基準に照らせば右業務に基づいて生じた本件顧問料収入は、所得税法上、給与所得ではなく事業所得に当たると認めるのが相当である。

 

 

伊藤 俊一

税理士

 

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※本連載は、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方 2法人編

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伊藤 俊一

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