今回からは、相続対策について見ていきます。まずは生前贈与についてお伝えします。※本連載は、ランドマーク税理士法人の代表税理士・清田幸弘氏の著書『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、お金持ちの人にこそ知ってほしい「資産を残す方法」をいくつか紹介します。

収入は、たった150万円。けれど相続税は億単位

私の生家は、横浜の農家です。私の両親は、朝から晩まで農作業に励んでいて、私自身もよく畑に出ていました。

 

冬の寒い日に、農作物に霜が降りないかと心配しては、畑を走った経験があります。除夜の鐘を聞きながら、菜を束ねて年越しをしたこともありました。家族総出で一所懸命働いても、都市部の農家はそれほど儲からない。それが私の実感です。

 

農作物は市場の状況次第で、驚くほど安価になります。汗水たらして働いたのに、一家の年収が、わずか「150万円」という、泣くに泣けない思いをしたこともありました。

 

収入は少なくても、農家には「不動産(土地)」という財産があります。「土地があるから安泰だ」。私も子どものころは、そう思っていました。

 

ですが、土地には税金がかかります。とくに「相続」となれば、高額な税金を取られる。「収入は少なくても、億単位の相続税がかかる」という現実を思い知ったのです。私が税理士にならず農業を続けていたら、今なお、税金や相続の問題を抱えていたでしょう。

贈与は「する側」と「される側」の間での合意が前提

では、相続税で困らないためには、どのような対策を講じればいいのでしょうか?「相続税対策」と呼ばれるものには、おもに、次の「6つ」があります。

 

【相続税対策】

①生前贈与

②養子縁組

③土地の活用

④生命保険

⑤寄付

⑥遺言

 

①生前贈与

「生前贈与」とは、自分が亡くなる前(生前)に、財産を与えること(贈与)です。生前贈与は、被相続人(財産を渡す側)の死亡後に財産を譲り受ける「通常相続」とは区別されています。

 

「贈与」とは、贈与する側とされる側の間で、「あげます」「もらいます」という合意が成立していることが前提です。

 

「通帳の名義は子どもだが、実際には親が保管している」「孫に贈与したことにして、実際の現金は祖父の金庫にしまわれている」といった場合は、「贈与」には該当しません。

贈与税と相続税、税率が高いのはどっち?

生前贈与をして財産が移動をすると、それにともなって、受け取った側に「贈与税」がかかります。贈与税は相続税よりも税額が高いため、全財産を一度に生前贈与をしてしまうと、相続税よりも高い贈与税を支払わなければいけなくなります。

 

そのため、贈与税が非課税となる制度や、贈与の税率が軽減される制度を利用するのが一般的です。

 

【相続と贈与の違い】

◎相続

•自分で相続税を払う時期を決められない。

•相続が発生した時点(その人が亡くなった時点)で所有する全財産に対して課税される(現預金の税金を先に払い、土地の税金は後回しにする、といったことができない)。

•基本的には、法定相続人にしか財産を引き継ぐことができない(配偶者と子ども、配偶者と親、配偶者と兄弟姉妹にしか財産を残せない。遺言書があれば別)。

 

◎贈与

•したいときに、いつでも、何度でもできる。

•自分の意思と関係なく税金が発生することはない。

•全財産を一度に贈与する必要がない。

•贈与税がかかるのは、贈与した財産に対してだけ。

•「どんな財産を、いくら贈与したいのか」を自分で決められる。

•法定相続人に限らず、何人に贈与してもよい。

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    本連載は、2016年10月3日刊行の書籍『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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