24時間、すべての頼みごとと誘いに「ノー」と答えるだけ
生活にいくぶんゆとりを生み出すために、あなたも「ノー」チャレンジに挑戦してみてください。丸1ヵ月続ける必要はありません。今から24時間、すべての頼みごとと誘いにノーと答えるだけでいいのです。
残業にノー、疲れているなら授業後のビールの誘いにもノー、専門家としての助言を無料ですることにノー、支援している非営利団体の役員就任依頼にノー、たまたまピックアップトラックを所有しているからといって、友人の家具を運ぶことにノー、いつも自分に回ってくる感情労働(接客や苦情処理など、労働者側の感情の適切なコントロールが求められる職務)にノー、結婚式で一曲歌ってくれないかと頼んでくる友だちにノー。
ごちそうを作っていて手が離せないから、フレッシュバジルを急いでスーパーに買いに行ってくれと言うパートナーにノー。
そうです。すべての人のすべての依頼にノーと答えて、その後どうなるかじっくり観察してください。どんな気分ですか? 相手はどんな反応を見せますか? あなたがほんとうにイエスと答えたいのはどんなことですか? 心配する必要はありません。ノーという決断が間違いだったと確信したときには、いつでも撤回できるのですから。
ですが、あなたのコンフォート・ゾーン(ストレスや不安などを感じない、安心感のある快適な領域を指す心理学用語)ともてる力を拡大するために、まずはノーから始める必要があるのです*。
*はっきりさせておきますが、私はあなたの人生を台無しにしたいわけではありません。ずっと夢見てきた仕事のオファーをもらった日に、ノーと言ってはいけません。この人と結婚したいとずっと願ってきた恋人にプロポーズされた日も同じです。
「ノー」チャレンジの明確な目的
このチャレンジは、やめるべきだとわかっていてもやめられない楽しみにノーというチャンスではありません。四旬節ではないのです(四旬節とは、キリスト教の復活祭前に設けられた40日間の節食と悔悛の期間)。身近な人たちにも、したいことにも、ささいなことにもノーと言う練習なのです。
「ノー」チャレンジの目的は、自分自身に優しくすること、この世界のなかで自分の占めるスペースを広げてもいいのだと認めることにあります。この実験をすれば、本能的な反応が社会規範の順守に基づいている場合がいかに多いか気づくでしょう。社会規範の順守はたいてい、もっとも容易な判断基準だからです。
ノーと断る練習をするときには、必要以上に言い訳をしないようにしましょう。「ノー」だけで十分意味は通りますし、「ノー」のあとに「サンキュー」を添えれば、「ありがとう、でも結構です」となり、丁寧さも加わります。感じよく、わかりやすく、きっぱりと伝えます。口ではノーと言っていても本気ではないと受け取られれば、相手は粘ってくるかもしれません。そうなると、よけいに断りづらくなります。
必要に応じて、「ノー」チャレンジをしていると説明してもいいですし、さきほども言ったとおり、決断を翻してもいいのです。しかし、まずはノーから始めなくてはなりません。このチャレンジに挑戦した人の多くは、その結果に驚きます。予想ほどひどい結果にならないのです。
相手に嫌われはしません。あなたはこの結果に気分を良くし、力づけられ、その実用性を実感するでしょう。そして、日々の生活のなかでも続けていく価値を見出すはずです。
ゾーイ・チャンス
イェール大学経営大学院助教
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