(※写真はイメージです/PIXTA)

海外移住や現地に関する情報がインターネット等で入手しやすくなったこと、現地国での外国人誘致政策が進んでいることなどを背景に、退職後、海外への移住を考えている人が増えています。本記事では池野さん夫婦(仮名)の事例とともに、リタイア後の海外移住の注意点について、FPの小川洋平氏が解説します。

池野さん夫婦の根本的な問題点

現在、池野さん夫婦はFPのもとで今後日本で生活するためのマネープランの立て直しを図っています。

 

池野さん夫婦の移住が失敗に終わった原因は、アメリカの物価上昇と円安に対して、マネープランニングをする際に見込んでいなかったことにあります。日本で暮らしていれば原則公的年金は物価に連動し上昇してくれますし、為替の影響がそのままダイレクトに生活費に出るわけではありません。

 

物価の上昇と円安により夫妻の家計収支は急激に悪化しました。公的年金は円建ての金額で給付されるため、円安になるということは、ドル換算した年金収入が大幅に減少することを意味します。

 

池野さんの場合、35万円前後の公的年金を受け取っていても、1ドル=110円のときは約3,181ドルですが、1ドル=145円程度まで円安になると約2,414ドルと、年金収入が25%以上も減額されていることになります。

 

また同時に、ドル建てでの物価水準も池野さんが移住してから1.2倍程度になっており、ドル建てでの収入は減っているのに物価が上がっています。ドルに移したのは5,000万円のうち1,500万円程度で、残りは日本円で保有し、生活費等も日本のクレジットカードなどで支払っていたのでした。

 

そのため、今後円安が進むと個人年金資産の商品も価値が目減りしてしまうため、移住からわずか4年で資産が1,000万円以上減ってしまう事態となったのでした。

 

帰国せずにそのままアメリカでの生活を続け、インフレが続くと、日本も同程度以上のインフレにならなければ生活費の赤字は膨らむ一方です。

 

日本ではゆとりの老後でも、現在のアメリカでは生活していくことが難しい程度になってしまいます。

 

アメリカ移住するなら…

​​今回の池野さんの問題点は、日本とアメリカのインフレ率や、為替を考えず、アメリカに生活の拠点を移す予定だったにもかかわらず、日本円で資産の大部分を持っていたことにあります。

 

アメリカで生活するのでしたら、基本的に資産はドルで保有すべきでしょう。預金をドルで保有しつつ、一部を投資信託などで運用しながら物価上昇に対応できるように運用していくというのが望ましいといえます。

 

また、日本とアメリカの物価上昇率の違いも加味しなければならないポイントで、日本は近年インフレと呼べる状態になってきましたが、過去25年程度物価が下がりお金の価値が下がる、「デフレ」と呼ばれる状態で、物価上昇のことを考えるという視点がなかったのでしょう。

 

それから、日本の公的年金は日本の物価上昇にはある程度対応していますが、アメリカの物価水準や円安に対応している訳ではありません。そのため、他国で生活しようと思ったら為替やインフレで目減りしてしまう可能性があります。

 

アメリカ国内に資産の大部分を移し、投資による利益を得る計画や、なにかしらの収入を得る手段を持ち、そうしたリスクにも対応できる対策も必要だったといえます。

購買力が低下する日本円…自分の資産を守るには

海外移住を考える際は、こういった物価上昇や為替のことも意識しておく必要があります。今回はもともと物価が高いアメリカでの例をご紹介しましたが、反対に物価の安い国に移住し、さほど金融資産は多くなくても余裕の暮らしができると考えてタイや東南アジアの国に移住するという方もいらっしゃるでしょう。

 

しかし、そういった国々も今後経済が成長し、人々が豊かになってくると物価水準が上がり、日本の物価に近づきます。現時点での物価水準だけで考えず、「モノを買う力=購買力」という観点からも生活設計を考えていく必要があります。

 

経済成長が停滞してきた日本において、日本円の「購買力」は過去30年程度ほぼ一貫して下がってきました。

 

海外で生活したいという方は特に考えなければなりませんが、日本円の購買力の低下は多くの資源を輸入に頼り生活している、日本国内で生活する我々にも影響をおよぼすことですので、購買力の低下から自分の資産を守り、生活を守るための意識を持つことが大切です。

 

日本円の購買力の低下から私達の資産を守るには、豊かになっていく世界の経済成長を私達の資産に取り込み、物価上昇以上に増やさなければなりません。そのためには投資信託等を用いて「国際分散投資」を実践することが有効です。当然リスク(価格の変動等)があり、リスクと正しく付き合っていく必要がありますが、額面のみでなく購買力を意識した、資産防衛の運用の方法を実践していきましょう。

 

 

小川 洋平

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