(※写真はイメージです/PIXTA)

院内の移動が多い看護師。医療DXはこうした医療従事者の業務の負担を軽減し、効率化するのに大きく役立ちます。本記事では石川記念会HITO病院(愛媛県四国中央市)の村山公一氏が同院の成功事例をもとに、医療従事者の働き方改革を伴う医療DXの進め方について解説します。

iPhoneで始める動画マニュアルの効用

iPhoneを利用した動画マニュアル作成は2019年から開始し、2023年内に6,000本を超えました。もちろん一般的な「介助方法マニュアル」ばかりではなく、「〇〇さんのトイレ介助について」といった個別マニュアルが整備されていき、その蓄積が6,000を超えたという話になります。

 

たとえばセラピストが患者さんの移乗介助などを動画に撮って他職種に配信することで、看護師や介護士も含めて安全にトイレ介助に取り組めるようになるなどの成果を上げています。しかもそれは職種ごとの専門知識を他職種にも伝える、教え合いの文化ができたと思います。さまざまな雇用形態や勤務形態がある病院では、時間と場所を選ばず学べる環境づくり、働きながら学べる制度づくりが大切なので、さらに拡大していきたいと思います。

 

出所:筆者作成
[図表3]現場で作り現場で活躍する現場発信の教育モデル 出所:筆者作成

生成AIやスマートグラスの院内活用

すでに動画マニュアルは6,000を超え、まさに現場発信の教育モデルが定着した感があるので、次なる取り組みとして生成AIを使って院内マニュアルを学習させることも始めています。

 

たとえば新人看護師が「入院手続きの手順を教えて」と生成AIに質問すると、これまでのマニュアルの中にある情報からすぐに回答を出してくれるかたちです。それからスマートグラスを利用して、言語聴覚士が遠隔指導する取り組みも行っています。

 

患者さんが転院した後も、食事場面をスマートグラスで中継し、それを病院側がスマートフォンで確認して必要な指示を出すなどして、誤嚥性肺炎を防いでいます。

 

誤嚥性肺炎による再入院率が13%から3%に!

いままで言語聴覚士や看護師の書いた施設間連絡票のやりとりだけでしたが、施設の介護士も実際の映像を共有しながら、「もう少しとろみをつけて」「こういう動きを確認して」といった具体的な指示があるので、学びや成長につながっていますし、誤嚥性肺炎による再入院率が13%から3%に下がりました。

 

また、再入院した3%の患者さんはいずれもすべて遠隔介入をしていないケースですが、全体的にかなり低下しており、施設介護士のスキルアップが伺えます。

 

[図表4]誤嚥性肺炎による再入院率の変化
出所:筆者作成

DX推進の成果

最後に当院が推進してきたDXの結果についてまとめたいと思います。

 

・「医師の働き方改革」(勤務医の時間外労働の年間上限)に関しては、医師の呼び出しがDX導入以前と比較し、約20%削減

・救急件数が2,000件超えと過去最高の状況だった状況でも時間外労働は増加せず

・時間外労働も全職種平均で54%減

・集合研修がほとんど開催されなくなったため、集合研修時の調整や実質的な開催時間もほぼ消失

・新人看護師3年間離職ゼロ、看護師全体の離職率が5%、有給取得が78%まで各種の指標を改善

 

これだけ持続可能で働きやすい環境整備が前進できたと考えています。

 

しかし、こうした数字は決してDX推進ではなく、それぞれのスタッフが思いを持って働いているから実現したことです。働く人たちの情熱や「こうありたい」という思いの実現をサポートするのがDXに期待される成果、役割だと考えています。

 

出所:筆者作成
[図表5]持続可能で働きやすい環境設備 出所:筆者作成

 

 

松山 公一

石川記念会 HITO病院 DX推進室HIA(HospitalInfrastructureArchitect)

1980年生

 

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※本記事の著者である福澤謙吾氏は2023年9月8日には「コトセラ・ウェビナー」(

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