(※写真はイメージです/PIXTA)

院内の移動が多い看護師。医療DXはこうした医療従事者の業務の負担を軽減し、効率化するのに大きく役立ちます。本記事では石川記念会HITO病院(愛媛県四国中央市)の村山公一氏が同院の成功事例をもとに、医療従事者の働き方改革を伴う医療DXの進め方について解説します。

3.同じように働いてみる

続いてはマインドセットの部分も含みますが、筆者は個人的に「立って働く人が使うツールを座っている人は作ることはできない」と思っています。実際に筆者自身が使う人と同じように働くことによって気づくことは多いのです。いざ現場で「立って操作したらここが使いづらい」とか、座っているときには見えなかった課題がくっきりと見えてきます。

 

実際に筆者も夜間も病棟にいて看護師の働き方を見てみました。すると、カートの音で患者さんを起こしてしまい、落ち込んでいる看護師や、スマートフォンで3点認証するときに手元が暗くて苦労している看護師などの様子を見ることができました。

 

一緒に働けば、その人が大切にしていることや苦労しているところに触れることができますし、「手元が暗くて操作しにくいならライトを用意しましょう」といった具体的な改善策を講じることができるわけです。

iPhone導入による効果

筆者が勤務する病院がiPhoneを導入したのは、2018年のことです。

 

やはり一番の成果はチャット使用によるコミュニケーションの変化でしょう。これまで電話による「1対1」のやりとりが中心でしたが、院内スマホのチャット機能を使うことで、「1対多数」の発信も行えるようになり、コミュニケーションの絶対量が増えました。

 

仕事のリズムを自分で組み立てやすくなったこともあり、次第に「医師からの指示待ち」から「医師への提案型」のコミュニケーションが増えていったのもポイントです。

 

当院で交わされるチャットの構成要素を分析すると、

 

・医療職からの提案系が4割

・医療職からの依頼系が3割

・医師の承認系が2割

・そのほか

(2021年12月)

 

という結果で、コミュニケーションの質が変化していったことが見てとれます。

 

もう1つの成果はiPhone導入が看護師の働き方改革につながったことです。もともと看護師は院内の移動が多く、実際に1日8〜10kmぐらい歩いていました。ところが、患者さんの近くからiPhoneでカルテを閲覧したり、医師・看護師・リハビリセラピスト・薬剤師・栄養士・MSWなどがチームチャットで繋がることによって多職種協働セルケアシステムを実施できるようになった結果、移動距離がなんと4~5kmも減りました。

 

ミーティングの実施回数の削減やワークフローの見直しなどにも取り組んだ結果ではありますが、看護部全体の時間外労働は年間6,000時間も削減できています。

 

また、当院の地域包括ケア病棟は、13人の介護スタッフのうち10人が外国人であり、5ヵ国語が飛び交う状態だったので、同時翻訳のチームチャットを導入することにしました。看護師が日本語で入力すると、ベトナム人の介護士にはベトナム語で表示されて、1つひとつの指示を母国語で理解することができるようになりました。

 

次第に看護師と介護士が助け合う機会が増えていき、これまで以上に密な関係性ができてきたと感じます。

 

[図表2]日本人看護師と海外介護人材との言語の壁を越えたチームチャット
出所:筆者作成
 

 

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※本記事の著者である福澤謙吾氏は2023年9月8日には「コトセラ・ウェビナー」(

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