一斉の「無予告調査」でキックバックの闇に迫る
F建材の調査状況をリョウチョウに上申すると、素早く反応してくれ、U建設、M資材およびF建材を所轄する3つの税務署による合同調査の道が開けていった。
着手当日、筆者はデスクでリョウチョウからの電話を待っていた。F建材の代表者からキックバックがバレたことが察知されないよう、M資材の社長が不正を認めてからF建材に調査に入る形を取った。
観念しているとはいえ、供述を翻す心配もあるため、F建材の代表者を税務署の会議室に待機させていた。一斉調査のことは教えずに前回聴取した内容を再確認して「質問応答記録」を作成していたとき、リョウチョウからの電話が鳴った。
リョウチョウ「M資材の社長が架空取引を認めました。F建材への振込は架空で間違いありません。U建設から流れる不正もありますが、M資材が単独でやった架空仕入もあるようです。F建材の詳細な供述調書の作成をお願いします」
筆者「U建設は落ちていますか?」
リョウチョウ「まだです。そこそこの規模の会社ですので資料が多くて苦戦しているようです。しかし、M資材が落ちたので時間の問題です」
それから2ヵ月ほど経った頃、リョウチョウから電話があった。
リョウチョウ「おかげさまでU建設とM資材の調査が終りました。U建設の不正が3億2,000万円で、M資材の不正が9,700万円です。F建材の課税処理をお願いします」
上田「上流の中堅ゼネコンへのバックは見つかりましたか?」
リョウチョウ「残念ながら見つけることができませんでした」
U建設の申告を分析すると、中堅ゼネコンへのキックバックしか考えられない。しかし、そこはリョウチョウも分かっていて、U建設の調査で終える判断をしたのだろう。
上流の中堅ゼネコンは、調査部所管の大企業だ。調査部と連携して中堅ゼネコンから流れる架空外注費を見つけだしても、そのお金はU建設の架空売上になり、その分の課税所得が減額される。余計な手間がかかるだけで、トータルとして国税の追徴税額はほとんど変わらない。
「短期間でここまで解明できれば上出来か……」とつぶやきながら、電話を切った。
トクチョウ班の実績はF建材の無申告2,800万円。追徴税額は重加算税を含めて400万円と小粒な事案だったが、川上のM資材とU建設を合わせて約4.5億円の不正所得を見つけ出した、印象深い事案だった。
上田 二郎
元国税査察官/税理士
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
調査官は重加算税をかけたがる
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