日本企業の「内部留保」が過去最高の「555兆円」だが…「賃上げに回せ」も「課税しろ」も“無理筋な議論”である理由【公認会計士が解説】

日本企業の「内部留保」が過去最高の「555兆円」だが…「賃上げに回せ」も「課税しろ」も“無理筋な議論”である理由【公認会計士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

物価が上昇しているのに、一向に給料が上がりません。他方で、日本企業の内部留保は過去最高の約555兆円に達しています。このことに関連して、「日本の企業は内部留保を従業員の賃上げに充てるべきだ」「課税すべきだ」などという指摘がみられます。しかし、その指摘は的を射ているといえるでしょうか。企業財務に詳しい公認会計士・税理士の黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ共同代表)が解説します。

◆内部留保の「使い道」

前述したように、内部留保は、その年度の利益から税金を支払い、株主への配当を行ったあとに残ったお金です。このお金は、事業活動の原資に充てられるほか、万が一のアクシデントに備える資金となります。

 

すなわち、まず、事業資金に充てられる場合の活用方法は、必ずしも「従業員の賃上げ」とは限りません。工場や機械設備、DX(デジタル・トランスフォーメーション)等の設備投資のほか、「運転資金」に充てる場合もあります。その場合、内部留保は、キャッシュは出ていっていますが、あくまでも資産として会社に存在していることに変わりはないので、減ることはありません。

 

また、予期しない天災や疫病(コロナ禍)、円安による原材料費等の高騰等に備えるために、一部をキープしておく必要もあります。

 

そこで、着目すべきは、企業が資金をどのような経営判断の下に活用しているのか、あるいは使わずに貯め込んでいるのかということです。

 

たとえば、「設備投資」の実態はどうでしょうか。「法人企業統計調査」の結果によれば、2019年度が-10.4%、2020年度が-5.0%だったのに対し、2021年度は+9.2%、2022年度は+4.4%と2年連続で増加しています。

 

このことからみてとれるのは、必ずしも日本企業が設備投資を怠っているわけではないということです。

 

また、設備投資を見合わせるとしても、ロシアのウクライナ侵攻の長期化と昨今の円安によって原材料費が高騰していることを考慮すると、やむを得ない面もあると考えられます。

 

ここまで解説してきたように、現時点での日本企業の内部留保の額が大きいことは、それ自体は過去に利益を積み重ねてきたことを示す数字にすぎません。しかも、このところの「円安」も大きく影響されています。

 

これまで内部留保が積み上げられてきたプロセスに前述のような問題はあるにせよ、だからといって、現在の内部留保の大きさから、一概に「賃上げに回すべき」とか「課税すべき」とかの結論を導き出すことはできません。

 

給料が上がらないという問題については、IT化が遅れていることや、労使協調の傾向が強いことなど、様々な要因が指摘されています。本記事では立ち入りませんが、少なくとも、内部留保の増大とは区別して考えるべきことであるといえます。

 

 

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ 共同代表

公認会計士

税理士

 

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/9開催】
「資産は借りて増やせ!」
3年間で延べ1,500社以上を担当した元銀行トップセールス社長が語る
“新規事業×融資活用”で資産を増やすレバレッジ経営戦略

 

【12/11開催】
企業オーナー・医療法人のための
事業と個人の安心を守る「グローバル資産戦略」
〜実例で学ぶ 経営資産の防衛と承継設計〜

 

【12/13-14開催】
不動産オーナーのための「法人化戦略」
賢いタックスプランニングで“キャッシュを最大化する”方法

 

 

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録