長生きリスクを乗り切るため、できるだけ長く働くのが理想だが…
中高年層のみならず、若年世代まで不安を抱いている「老後資金の不足」の問題。日本政府は、従来の「国頼み」から「自助努力」へと舵を切るよう国民へ促し、実際にその方向で定着しつつある。
しかし、老後への準備を進めるにあたり、ぜひ知っておいていただきたいこともある。それは、「老後」に大きく3つのライフステージの変化があるということだ。
(1)65歳まで…定年後も一定の収入を確保
多くの人は60歳で定年退職するが、現在は年金受給は原則65歳スタートとなる。そのため、多くの人は定年退職後も、嘱託や契約社員などの雇用形態で、勤務を継続することになる。しかし、65歳になると、年金の受給をスタートさせるかどうか、判断することになる。もしここで年金生活へと本格的にシフトすると、ライフステージの大きな転換点となる。
(2)70歳まで…気力・体力が続くなら、負担を軽くしつつ就労継続
近年の法改正により、企業は70歳までの就業機会の確保が努力義務となっている。また、在職老齢年金制度の収入要件も変更され、長く働き続けられる環境の整備は進んでいる。長生きがリスクとなることから、長く「給与」をもらい続けることは、人生の安心材料となる。65歳以降の就労を検討する人は、今後もますます増えていくだろう。
(3)完全リタイア…年金受給+老後資産の取り崩しの段階へ
いくら就労意欲があっても、年齢を重ねればいずれは完全リタイアする日が来る。そうなれば、原則として収入は年金だけだ。ここから先は、老後資産の取り崩しステージへと入っていく。
夫が先立ったあとも妻を守る「遺族年金」
厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給権者の老齢年金の平均年金月額は5万6,368円。厚生年金保険(第1号)の平均年金月額 は、併給する老齢基礎年金の額を含めて14万5,665円。
平均的な元会社の夫と専業主婦の妻で、月20万円程度の年金額だ。年金の受給年齢を繰り下げると、その分、受給額もアップする。そのうえで、さらなる不足分は貯蓄を取り崩すのが、上記(3)での基本的なライフスタイルとなる。
ここで問題となるのが「配偶者の死」というさらなる人生の転換点だ。
2022年、日本人の平均寿命は、男性81.05年、女性87.09年。また生存率が50%を下回る年齢(=誕生0週の生存数を100とし、半分の50を下回る年齢)は、男性で84歳、女性で90歳。日本人の寿命には6歳ほどの男女差がある。また昨今、初婚同士の結婚における男女の年齢差は1.5歳ほど。これらを考慮すると、平均的な夫婦の場合、先に夫が亡くなり、妻はその後7~8年ほど、「お1人さま」の老後を過ごすイメージとなる。
夫が元会社員や公務員で厚生年金をもらっていた場合、残された妻は遺族厚生年金がもらえる。厚生労働省によると、遺族年金の平均受給額は月8万円ほどであり、自身の国民年金と合わせると、月14万円程度。 80歳を超えた女性のひとり暮らしの場合、持ち家なら問題のない金額だ。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、遺族基礎年金には子の要件があるので、基本的に妻が老後に受け取ることができるのは「遺族厚生年金」である。遺族基礎年金同様、「①死亡した人に生計を維持されていた」遺族であること、また遺族のうち「②最も優先順位の高い人」が受け取ることができる。なお、②の優先順位は、以下の通りだ。
1.子※1のある配偶者
2.子※1
3.子※1のない配偶者
4.父母※2
5.孫※1
6.祖父母※2
※1:18歳になった年度の3月31日までにあるか、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態
※2:55歳以上。受給開始は60歳から
「内縁関係」にある妻も、心配ない!
しかし、近年では、ある選択をする夫婦が増加しつつある。それは事実婚だ。女性側のキャリア継続のため、あるいは家族の問題など理由は様々だが、籍を入れない「内縁関係」として、普通の夫婦と同様に生活をしている人たち増えつつあるのだ。
このような立場にある妻の場合、夫に先立たれたらどうなってしまうのか?
長年働き続けたキャリアのある妻なら、自身の年金も預貯金も盤石かもしれないが、夫が亡くなったあとの年金収入は自身の国民年金の月6万円だけ…という妻の場合、貯蓄を取り崩して生活するしかなく、非常に心細い思いをすることになってしまう。
だが、過剰に心配しないでほしい。厚生年金保険法3条2項には『厚生年金保険法において、配偶者には、婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者(以下「事実婚関係にある者」という。)を含むものとする。』とあるように、事実婚でも、遺族厚生年金の対象になるということが明記されている。「自分は遺族年金の対象外」などと、あきらめる必要はないのだ。
実際に事実婚で厚生年金の対象になるかのポイントは2つある。
ひとつめは、「事実上婚関係にある者」であること。これを認めてもらうには、「①当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること」「②当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在すること」という要件に当てはまることが必要だ。
次に「生計維持関係にある者」であること。これを認めてもらうには、収入要件と生計同一要件を満たしていることが必要になる。「籍を入れなかっただけで、ずっと生活を共にしてきた」という内縁の妻であれば、要件から外れることはないだろう。
内縁関係を証明する資料を用意する必要はあるものの、事実婚夫婦も遺族厚生年金の対象であることを知れば、ニッコリだ。おひとりさまとして生きる不安も軽減できるだろう。
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