70代・女性受刑者「トマトやキュウリ1本ぐらいでここ(刑務所)に来ちゃった」――激増する“塀の中のおばあさん”

70代・女性受刑者「トマトやキュウリ1本ぐらいでここ(刑務所)に来ちゃった」――激増する“塀の中のおばあさん”
(※写真はイメージです/PIXTA)

ここ30年間で「犯罪者」のイメージは様変わりしました。男性受刑者が著しく減少する一方で、女性受刑者は高止まり傾向にあり、中でも「65歳以上の女性」の割合は30余年で10倍と激増。女性の犯罪は「窃盗」と「覚醒剤取締法違反」で8割以上を占め、これらの受刑者は「これが三度目」「五度目」など、累犯が多いといいます。彼女たちはなぜ塀の中へ来て、今、何を思うのか。ジャーナリスト・猪熊律子氏による迫真のルポ『塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

いくら盗ると刑務所に入るのか?

ところで、盗んだものが「トマト」「キュウリ」「リンゴ」などというインタビューを読んで、「そんな少額の万引きでも刑務所に入るのか」と疑問に思われた読者がいるかもしれない。

 

被害金額5000円未満程度で、その他の特別な要因がない場合、万引きをしていきなり刑務所行きになることはまずない。「微罪処分」といって、書類のみの処理として、警察が注意し、検察庁に報告して終わりになるのが普通だ。

 

しかし、微罪でも二度、三度と繰り返すと話は違ってくる。検察庁に送致され、検察段階では、起訴される前に「起訴猶予」という仕組みがあるが、それでも犯罪を続けていると起訴されて裁判になる。裁判段階でも「執行猶予」という仕組みがあるものの、万引きを続けていると実刑判決を受け、刑務所に来ることになる。

 

万引きをする高齢女性が刑務所に来るケースが増えている背景として、盗犯等防止法の「常習累犯窃盗罪」の存在を指摘する声もある。常習性のある窃盗者の刑を重くする規定で、過去10年以内に窃盗罪などで懲役6月以上を3回以上言い渡された場合、新たに窃盗罪に問われると、3年以上の有期懲役になる。

 

執行猶予の条件は懲役3年以下などのため、常習累犯窃盗罪になると実刑を免れにくくなる。このため、少額の窃盗を繰り返す累犯者が刑務所に長期間入る要因になっている。実際、この規定の適用により、「2円相当」の封筒を盗んだ罪で、3年の実刑判決を受けた60代の女性がいた。今回、インタビューの内容を紹介した受刑者は、この常習累犯窃盗罪に問われている。

 

 

猪熊 律子

読売新聞東京本社編集委員

 

1985年4月、読売新聞社入社。2014年9月、社会保障部長、17年9月、編集委員。専門は社会保障。98~99年、フルブライト奨学生兼読売新聞社海外留学生としてアメリカに留学。スタンフォード大学のジャーナリスト向けプログラム「John S. Knight Journalism Fellowships at Stanford」修了。早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。共著に『ボクはやっと認知症のことがわかった』(KADOKAWA)などがある。

 

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※本連載は、猪熊律子氏の著書『塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で

塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で

猪熊 律子

KADOKAWA

女性受刑者における65歳以上の高齢受刑者の割合が急増中。 「窃盗」と「覚醒剤取締法違反」で8割以上を占める女性の犯罪。彼女たちはなぜ塀の中へ来て、今、何を思うのか? 受刑者らの生々しい声、刑罰とケアの狭間で苦悩…

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