いくら盗ると刑務所に入るのか?
ところで、盗んだものが「トマト」「キュウリ」「リンゴ」などというインタビューを読んで、「そんな少額の万引きでも刑務所に入るのか」と疑問に思われた読者がいるかもしれない。
被害金額5000円未満程度で、その他の特別な要因がない場合、万引きをしていきなり刑務所行きになることはまずない。「微罪処分」といって、書類のみの処理として、警察が注意し、検察庁に報告して終わりになるのが普通だ。
しかし、微罪でも二度、三度と繰り返すと話は違ってくる。検察庁に送致され、検察段階では、起訴される前に「起訴猶予」という仕組みがあるが、それでも犯罪を続けていると起訴されて裁判になる。裁判段階でも「執行猶予」という仕組みがあるものの、万引きを続けていると実刑判決を受け、刑務所に来ることになる。
万引きをする高齢女性が刑務所に来るケースが増えている背景として、盗犯等防止法の「常習累犯窃盗罪」の存在を指摘する声もある。常習性のある窃盗者の刑を重くする規定で、過去10年以内に窃盗罪などで懲役6月以上を3回以上言い渡された場合、新たに窃盗罪に問われると、3年以上の有期懲役になる。
執行猶予の条件は懲役3年以下などのため、常習累犯窃盗罪になると実刑を免れにくくなる。このため、少額の窃盗を繰り返す累犯者が刑務所に長期間入る要因になっている。実際、この規定の適用により、「2円相当」の封筒を盗んだ罪で、3年の実刑判決を受けた60代の女性がいた。今回、インタビューの内容を紹介した受刑者は、この常習累犯窃盗罪に問われている。
猪熊 律子
読売新聞東京本社編集委員
1985年4月、読売新聞社入社。2014年9月、社会保障部長、17年9月、編集委員。専門は社会保障。98~99年、フルブライト奨学生兼読売新聞社海外留学生としてアメリカに留学。スタンフォード大学のジャーナリスト向けプログラム「John S. Knight Journalism Fellowships at Stanford」修了。早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。共著に『ボクはやっと認知症のことがわかった』(KADOKAWA)などがある。
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