40代女性受刑者、窃盗で刑務所へ…「万引きをやめたいけど、“やめるのも怖くて”できない」インタビューから垣間見えた“深い心の闇”

40代女性受刑者、窃盗で刑務所へ…「万引きをやめたいけど、“やめるのも怖くて”できない」インタビューから垣間見えた“深い心の闇”
(※写真はイメージです/PIXTA)

ここ30年間で「犯罪者」のイメージは様変わりしました。男性受刑者が著しく減少する一方で、女性受刑者は高止まり傾向にあり、中でも「65歳以上の女性」の割合は30余年で10倍と激増。女性の犯罪は「窃盗」と「覚醒剤取締法違反」で8割以上を占め、これらの受刑者は「これが三度目」「五度目」など、累犯が多いといいます。彼女たちはなぜ塀の中へ来て、今、何を思うのか。ジャーナリスト・猪熊律子氏による迫真のルポ『塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

摂食障害と窃盗

窃盗は、高齢女性に断トツに多いものの、摂食障害に苦しむ若い女性受刑者のあいだでも多く見られる犯罪だ。

 

摂食障害とは、体重や体型へのこだわりやストレスなどから、正常な食生活を送ることができなくなる精神疾患をいう。極端な食事制限(拒食症)や、過度な量の食事摂取(過食症)などを伴い、女性に多く、10代での発症率が高い。専門家によると、死亡率が高い重篤な病気であるにもかかわらず、そうした知識が十分に広まっておらず、治療を受けていないケースも多い。遺伝や環境的な要因が複雑に絡むとされ、厚生労働省によると、患者数は約24万5000人に上る(2019年時点)。

 

女性受刑者では、収容者全体の5%程度(推計約170人)が摂食障害と見られ、その多くが窃盗の累犯として服役している。

【インタビュー】40代女性受刑者、「万引き」で初入

次の受刑者が摂食障害となり、刑務所に来るきっかけになったのはダイエットだ。
 

■「万引きをやめたいけど、やめるのも怖くてできない」

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(以下、インタビュー)

 

刑務所に来たのは初めてです。もともと体重が少なかったんですけど、拘置所でさらにやせてしまって。身長は160センチ以上あるのに体重は恐らく30キロを切り、自分でも生きているのが不思議というレベルにまでなってしまった。このままだと一般の刑務所に移送できないといわれて、拘置所から直接、この医療刑務所に来ました。

 

摂食障害になったのは10代のときです。単純にやせてきれいになりたい、というダイエットがきっかけです。ただし自分の性格からか、ストイックに食事の量を減らしてしまった。それで満腹中枢がおかしくなったみたいで、かなりやせました。でも、リバウンドするんですね。それまで抑えていた食欲が一気に盛り返し、過食・嘔吐になりました。

 

万引きを始めたのは20代後半からです。多かったのは菓子パンやお菓子、総菜。1回2000円や3000円ぐらい。もう数え切れないほどやって、「もう来ないで」と出禁(出入り禁止)になった店もあります。

 

普通にフルタイムで働いていたからお金はあったけど、どうせ吐いてしまうのだからもったいない、お金は出せないみたいな感覚が強くありました。

 

そのうち、盗るという行為に依存して、盗ること自体が大事になってしまった。義務感というか、脅迫されているような感じになり、万引きをやめたいけど、やめるのも怖くてできない。それがなくなるほうが怖いという感覚になりました。過食・嘔吐を知った夫には理解できないといわれました。今は離婚しています。

 

■医療刑務所に来て、初めて「本気で治療してくれようとしている」と感じた

30代のとき、一度だけ病院に行ったことがあります。心療内科で、神経性食欲不振症と診断されたけど、ただ診断をもらっただけで、それではこうしましょう、ああしましょうということはありませんでした。私としては、最後の救いとして病院に行って、そこに行けば何とかしてくれると思って行ったんですけど、結局、何も変わらなかった。それに絶望して、病院には二度と行かなくなりました。

 

皮肉ですが、この医療刑務所に来て、初めて本気で治そうとしてくれているのを感じます。いろいろな治療プログラムをして、本気で向き合い、支えてくれる。お陰で体重が増えました。自分でもびっくりするぐらい。ここに来たときの1.5倍ぐらいに体重が増えたのではないかと思います。数字は直接教えてもらえませんが、来たときの服は恐らく入らないだろうと感じます。面会に来る身内も驚いています。ここで本気で治療してくれなければ、こちらも甘えて隠れて吐いたり、食べ物を隠したりしたと思います。でも、そういう甘えがきかないくらい、本気で心配して全力でやってくれた。ありがたいことだと思っています。

 

■「税金で治療してくれているということは、社会の一員として自分もいていいのだ」

早く外に出たいですけど、ドラッグと違って食べ物はいたるところにあり、ものを食べなければ生きていけないから、たくさんの誘惑がある厳しさを感じます。よっぽど自制していかないと。自由だけれど、自由じゃないという縛りを感じます。ただ、ここでの経験を振り返れば、自分はもう裏切れないなとは思います。刑務官や医師、看護師の人に対してもそうですし、自分のことも裏切りたくない。

 

国に対してもそうですよね。税金で治療してくれているということは、社会の一員として、自分も社会にいてよいのだと感じるので、出所したらしっかり働いて納税したい。迷惑をかけたお店にも、自分が買い物をすることで恩返しして償いたい。

 

それと、万引きした人がやせすぎの場合、摂食障害を疑い、治療につなげてくれるような社会であればいいなと思います。「摂食障害なんです」という言葉を本人がいえて、周囲も障害に対する理解があれば、こんなに繰り返し、刑務所には来ないと思う。出所後は、そのための活動をしたいと思っています。

 

(インタビューここまで。2020年11月、東日本成人矯正医療センターで)

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行動の裏に垣間見える「深い心の闇」

はきはきした口調が印象的だ。

 

「盗るという行為に依存して、盗ることが自体が大事になった」「万引きをやめたいけど、やめるのも怖くてできない。それがなくなるほうが怖い」「税金で治療してくれているということは、社会の一員として自分もいていいのだ」という言葉が印象に残った。

 

インタビューした受刑者からは、摂食障害や、それに伴う窃盗という行動の裏に、深い心の闇があることが垣間見える。

 

その闇にどう明かりを灯し、回復や更生につなげようとしているのか。センターでの治療法には、ヨガや習字などの作業療法や、読書療法、受刑者同士が話し合う集団療法などがある。著書『塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』では、治療プログラムの一端を紹介している。

 

 

猪熊 律子

読売新聞東京本社編集委員

 

1985年4月、読売新聞社入社。2014年9月、社会保障部長、17年9月、編集委員。専門は社会保障。98~99年、フルブライト奨学生兼読売新聞社海外留学生としてアメリカに留学。スタンフォード大学のジャーナリスト向けプログラム「John S. Knight Journalism Fellowships at Stanford」修了。早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。共著に『ボクはやっと認知症のことがわかった』(KADOKAWA)などがある。

 

 

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    ※本連載は、猪熊律子氏の著書『塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

    塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で

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    猪熊 律子

    KADOKAWA

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