日本特有の商習慣と効率
ディスポーサブルの医療機器では、外国資本のメーカーのマーケットシェアが小さくない。しかし、筆者のようにサプライチェーンに従事している人間は、海外のマネジメントから在庫資産の運用効率に関してシビアな目を向けられている。
短期貸し出しをした製品の多くは使用されずに返却され、100本以上貸し出しても数本しか消費されない製品群があるからだ。競合他社の多い製品では、出荷してもまったく使用されずに返却されてくるオーダーのほうが多いのが実情だ。
そして、置き在庫と貸し出し製品の何割かは一度も使用されることなく製品有効期限が切れて廃棄処分されてしまう。
シンプルに出荷した分が売上になる海外のマネジメント層にはにわかには信じてもらえないほど、日本の貸し出しビジネスはグローバルな視点で見ると非効率で過度に「お客様寄り」のサービスなのである。
電子タグを使用した政府・企業による効率化への取り組み
医療機器業界としても手をこまねいているわけではない。
医療機器の物流オペレーションは長らく製品に付いているバーコードを手作業で1つひとつスキャンすることによって出納管理を行ってきたが、近年、アパレル業の小売店のレジ等で運用が進んでいるRFID(非接触の電子タグ)の導入が進んでいる。
米国医療機器・IVD工業会(AMDD)の流通・IT委員会では数年間からRFIDの導入へのガイドラインを示し、業界をあげてオペレーションの効率化を推進している。
また、内閣府主導の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」と言う府省・各産業界をまたいだプロジェクトのなかでは、電子タグを活用し、サプライチェーンの上流から下流までのトレーサビリティを可視化する「スマート物流サービス」の社会実験が今春完了した。
我が社の機器もAMDDを通じてこの実験に参加したが、貸し出した製品がいまどこにあるのかが、社会インフラとしてのデータベース上でリアルタイムに把握できれば、過剰な在庫や発注を未然に抑制し、有効期限切れで廃棄されてしまう在庫の削減に大きな効果が期待できると感じた。
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