打つ手なし…5,500万円のマンションは「断念」することに
Aさんは開口一番、「てっきりうちにはお金があると思っていたのに、まさかこんなに少ないなんて……なんとなく聞きづらくて、どうせ貯めているだろうと思い込んでいました。いまさら後悔してもしきれませんが、なんとかなりませんか?」と涙目です。
話を伺った筆者は、Aさん自身の現在の状況と両親の今後について、次のように話しました。
「フルローンで5,500万円を返済するのに、返済金利が現在より低い住宅ローンで借りられたとしても、今後、毎年固定資産税や修繕費などの負担があります。筆者の試算では、Aさんの収入に対しては借入額が多額で、完済は難しいように思えます。
支払った手付金100万円は戻ってこないでしょうが、住宅販売会社や住宅ローンの審査を受けた銀行に事情を話し、残念ですがこの物件の契約は断念したほうがいいでしょう」
「一方、ご両親については、その年齢から今後介護や看護が必要に可能性がありますが、その費用は年金とこれまでの貯蓄で賄えそうです。
ただ住まいについては、築古な実家を建て替えるにしても、両親はAさん家族と同居を望んでいるようですし、また建て替えるまでの資金はお持ちではないようです。
もし、Aさん名義で実家を建て替えて両親と同居するなら、父名義の土地は使用貸借※して、そのうえでAさん名義で住宅ローンを借り、住宅を建てることになるでしょう。
※ この場合はAさんが父から無償で土地を借りること。
この点は、Aさん夫婦や両親とも話し合いが必要です」
FPの助言をもとに、実家を建て替え両親と同居することに決めたAさん
結局、Aさんは実家のある場所にAさん名義で新居を建て、両親も同居することになりました。旧家屋の解体費用込みで約2,800万円の戸建てです。
頭金は現金で入れ、残りの2,500万円を借り入れ。また住宅ローンの返済期間は、当初は30年の予定でしたが、Aさんが定年退職予定の65歳過ぎ(25年)に短縮しました。
諸々の手続きがひと段落したころ、Aさんは父に聞いてみました。
「なんかさ、俺が子どものときに株やってたじゃん。結構儲かってたっぽいけど、あれいまもやってるの?」
「ああ、もうとっくに辞めたよ。儲かったときは嬉しくて話したこともあったが、黙っていたけど結構損してな」
父はあっけらかんと答えました。Aさんは驚くと同時に、親のお金をあてにして、きちんと準備していなかった自分の甘さを反省したそうです。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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