「オーナーが複数いるプロジェクト」を円滑に着地させる方法
Q
プロジェクト・オーナーが複数いる場合、プロマネはどう対応すべき?
A
オーナー全員が集まって合議制で意思決定する場を作りましょう。
プロジェクト・オーナーは1人であるべきですが、現実には、どうしてもオーナーを1人に絞れないこともあります。
私がプロマネを務めた日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)買収プロジェクトでは、ソフトバンクの孫社長(当時)、オリックスの宮内義彦会長(当時)、東京海上火災保険の樋口公啓社長(当時)の3名がオーナーでした。
企業同士が対等な合併や提携を行なう案件では、それぞれのトップがオーナーにならざるを得ません。よってどうしてもオーナーが複数になってしまうわけです。
この場合、プロマネがやるべきことは、定期的にオーナーが集まる定例会をセッティングし、合議制で意思決定してもらうことです。
オーナーが複数いても、最終的に1つの結論が出れば、プロジェクトは円滑に進められます。
毎回の定例会で現場から上がってきた議題を合議にかけ、オーナーたちが出した結論を必ず紙に残して共有してください。
そうすれば、常に最新の状況に対してオーナー全員の承認が得られるので、後で鶴の一声による手戻りが発生することはありません。
当時、日本債券信用銀行は預金保険機構の管理下に置かれていたので、プロマネである私が窓口となって預金保険機構と買収交渉を進めました。また、オリックスや東京海上火災保険から参画したプロジェクト・メンバー同士の横をつないで、現場レベルでやるべきことはどんどん決めていきました。
こうして現場で決まったことをオーナーが集まる定例会にかけて、承認をもらいながらプロジェクトを進め、何とかこの大型案件を無事にやり遂げることができたのです。
この案件のように、どうしてもオーナーを1人に絞れない場合は、オーナーが集まるステアリングコミッティ(大規模なプロジェクトにおいて意思決定や利害調整を行なう委員会のこと)や定例会などの場を作り、全員が合意の上で1つの結論を出してもらうことが重要です。
三木 雄信
トライズ株式会社 代表取締役社長