介護でも割を食ってしまう、かわいそうな「団塊ジュニア世代」
私は今年50歳になった団塊ジュニア世代です。いま80代の母親の介護を行っています。なるべく訪問介護やデイサービスを活用していますが、それでも負担はかなり重く、心身、そして経済的にも厳しい状況にあります。そこで思ったのですが、今後、ますます高齢化社会が進展するなか、将来、私自身は介護を受けられるのでしょうか。
50歳会社員・男性(東京都町田市在住)
歴史に類を見ないほどのスピードで少子高齢化が進展する日本。予想では、2056年には人口が1億人を割りこみ、4人に1人が65歳以上となる見込みです(国立社会保障・人口問題研究所より)。
現役世代1.3人で1人の高齢者を支えるというむずかしい状況のなか、介護が必要な人は2050年度に941万人に膨らみ、介護に必要な人数は、4割も不足するといわれています。
このことから、高齢者が高齢者を介護する「老々家族介護」の時代が、確実にやってくるといえるでしょう。
なかでも気の毒なのは「団塊ジュニア」と呼ばれる現在50代前後の人々です。バブル経済の崩壊とともに社会人となり、デフレの25年間、多くの人は過酷な就労状況に置かれてきたわけですが、彼らの場合、仕事で苦戦を強いられただけでなく、そもそもの人数が多いことから、老後は一層厳しい生活となりそうです。
公益財団法人生命保険文化センターによると、日本では85歳以上の高齢者のうち6割が介護認定されています。しかし、団塊ジュニアの多くが80代となる30年後、介護をしてくれる人は若い世代の人数は、現状を見る限り相当少なくなりそうです。
介護職員、世界各国で争奪戦か?
では、もし介護を受けられない場合、「介護なし」でどこまで頑張ることが可能でしょうか?
介護の認定状況を確認すると、自力での歩行や入浴が難しくなりはじめる「要介護2」以上の人が5割を占めています。もし必要な介護職員が6割しかいなければ、介護が受けられるのは要介護認定を受けた人たちだけであり、400万人近くいる「要支援」(日常生活の基本的な動作は自力で行えるものの、負担の大きい家事等には支援が必要な状態)の人たちは、介護を受けられない可能性が高いといえます。介護職員のサポートが受けられないなら、家事をはじめとする、身の回りのことを自分でするしかありません。
介護職員を増やす方法として「給料を上げる」という方法を思いつくかもしれませんが、残念ながら、介護保険にかかる費用は非常に高額であり、日本の財政では、これ以上介護費用を増やすことが難しい状況です。なにしろ、2040年度の介護費用は25兆円にも上ると予想されています。
そもそも介護は心身の負担が大きいため、介護職員は慢性的に人手不足です。外国人の採用という方法も選択肢ではありますが、高齢化が進んでいるのは日本だけではありません。中国をはじめとする多くの国で獲得競争になることから、やはり、採用は簡単ではないでしょう。
「縁もゆかりもない地方都市」が終の棲家になる可能性も
介護サービスを受けられない場合、最悪は「自分の子どもの世話になる」ことも視野に入ってきますが、それが可能かどうかは、個々の事情を見ないとなんともいえません。
現状、最も人気が高い介護施設は、入居一時金がゼロで毎月の利用料が10万円程度と格安の「特別養護老人ホーム」ですが、2022年の時点で25万人以上の高齢者が順番待ちをしています。そのため、団塊世代が入居を期待しても、なかなか実現は厳しいでしょう。やはり、高い利用料を支払って民間の老人ホームに入るほうが現実的だといえます。
民間の介護付き有料老人ホームの費用は、入居一時金が200万円程度、毎月の利用料は25万円程度といわれています。3年間入居すると、トータルで1,000万円は必要になるなど、なかなか高額です。
しかし、有料老人ホームの入居費用が最も高額なのは東京であり、家賃の安い地方であれば、東京にくらべれば安価です。そのため、自分の経済状況を考えながら、地方の老人ホームを検討することも選択肢となるでしょう。たとえば、宮崎県や青森県は、入居一時金がゼロ、毎月の利用料は10万円くらいとなっており、特別養護老人ホームと同じ水準のところもあります。
これからは、縁のなかった地方都市で、終の棲家を見つける人が増えてくるかもしれません。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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