日本の大卒初任給、「ニューヨークの最低賃金」を下回る…「日本・一人負け」の切実な実態【元IMFエコノミストが解説】

日本の大卒初任給、「ニューヨークの最低賃金」を下回る…「日本・一人負け」の切実な実態【元IMFエコノミストが解説】
※画像はイメージです/PIXTA

G7各国が順調に賃上げを行うなか、日本の賃金は低止まりを続け「一人負け」状態に陥っています。本記事では、元IMF(国際通貨基金)エコノミストで東京都立大学経済経営学部教授の宮本弘曉氏による著書『一人負けニッポンの勝機 世界インフレと日本の未来』(ウェッジ社)から、日本の低迷する賃金の実態について解説します。

G7諸国の賃金が上がるなか、日本「一人負け」状態

次に、賃金の推移を見てみましょう。図表2は、1997年の平均年間賃金を基準として100とし、G7諸国および韓国の賃金の推移を示したものです。1997年を基準としているのは、日本の賃金がその年をピークにして以降、減少傾向にあるためです。

 

[図表2]平均年間賃金の推移(1997年=100)

 

図表2から、日本の賃金が過去25年間ほとんど上がっていないことがわかります。2022年における日本の指数は100で、一方、アメリカは140で、賃金は過去25年間で約1.4倍に増加しています。

 

また、イギリス、カナダやフランスは約1.3倍に、ドイツも約1.2倍に成長しています。韓国の数字は153で、賃金の大幅な伸びが確認できます。

 

このように、他の先進諸国では、この25年間に賃金が2割から5割上昇しているのに対して、日本だけが「一人負け」といっても過言でないほど賃金が上がっていません。

 

為替レートで見ると、「2000年」はアメリカより高賃金だった…

ただし、これらの数字は現実の賃金格差を直接示すものではありません。なぜなら、データは物価変動の影響を差し引いた実質賃金であり、名目賃金ではないからです。

 

さらに、ドル換算に際しては、「購買力平価」が用いられて、現実の為替レートとの乖離が存在します。購買力平価とは、ある国の通貨建ての資金の購買力が他の国でも同等の水準となるように為替レートが決定されるという考え方に基づくものです。

 

そこで、現実の為替レートで換算した名目賃金を比較してみましょう。図表3は日本、アメリカ、韓国の各年の名目平均賃金をその年の平均為替レートでドル換算したものの推移を示しています。

 

[図表3]名目平均賃金の推移(ドル換算)

 

目を引くのが2000年の数字です。日本の平均賃金がアメリカよりも高かったことがわかります。2000年の名目平均賃金は日本で約462万円、アメリカで3万8863ドルでした。

 

当時の為替レートが1ドル=107.8円だったため、日本の賃金はドル換算で4万2914ドルと、アメリカの賃金よりも1割ほど高い水準でした。また、韓国の賃金はドル換算で1万6659ドルと、日本の賃金の4割弱でした。

 

ところが、2022年の賃金を見ると、日本の3万393ドルに対して、アメリカは7万7463ドルと、日本の2・3倍となっています。また、韓国の賃金は3万6012ドルと、実質、購買力平価の場合と同様、日本を超えています。
 

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一人負けニッポンの勝機

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宮本 弘曉

ウェッジ社

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