⑥他責思考を捨てろ
他責思考というのは、今の状況に陥った責任を他人や環境など、外部の責任にすりかえる考え方のことです。これに対して自責思考は現状の責任を外部に求めず、自分の言動を振り返って自分の責任であることを認め、自省して改善しようとする考え方のことです。
私はこれまでたくさんの受験生を見てきましたが、最短距離で合格をつかむ生徒とそうでない生徒では、明らかな性格の違いがあると感じています。鬼管理の勉強にスムーズに慣れて、成果を挙げていく生徒は、素直でなおかつ自分の責任で行動する自責思考の持ち主が多いのです。
素直な生徒とはすぐに行動ができる生徒です。アドバイスを素直に受け入れ、迷うことなく実行します。それに対して素直でない生徒は、あれこれと理由をつけ、やらずに済む理由をひねり出してそこから逃げ出してしまいます。分析改善を面倒がらずに実行したり、講師のアドバイスを素直に受け入れて行動に移せたりするのも、素直な性格がもつ大きなアドバンテージになります。
鬼管理をやると決めたらとにかく行動するべきです。そんなの無理、これは難しい、そんなことをする意味があるのか、などと否定する気持ちが湧いたとしても、いったん胸に納めて行動してみるのです。行動すれば成果を実感できるので、否定する気持ちも薄れていくものです。
そしてもう1つ成績アップのために重要な考え方が自責思考です。
これは自責思考ができない人、他責思考の人の思考パターンと比較しながら考えると理解しやすくなります。例えば、勉強中にLINEの通知が来てスマホを見たら、そのまま友達と長いやり取りをしてしまって、1時間も勉強を中断してしまったとします。
他責思考をする人は、LINEを送ってきた人のせいで勉強できなかったと考えます。
あいつはいつも勉強の邪魔をしてくると怒りをぶつけることさえあります。要するに、あらゆることを他者や環境のせいだと受け止めてしまうので、問題が起こってもそれを自分で改善したり克服したりすることができません。なぜなら「他者」や「環境」は単なる外部要因であり、自分ではどうすることもできないからです。
そのため翌日以降もLINEが届いて同じことが起こります。その人からの連絡がなかったとしても、別の人やアプリからの通知が来て、延々と同じことを繰り返すのです。
しかも他責思考をしていると気分を害されることが多くなります。今からやろうと思っていたところに親から勉強しろと言われてやる気をなくした、勉強しようと思ったら弟が目の前でゲームを始めた、といった日常のささいなことで、イライラして勉強する気を失ってしまいます。
一方、自責思考の人はそうではありません。1時間友達とLINEをしてしまったら、勉強机にスマホを置いていた自分がいけなかった、あるいは今勉強中だから返信できないと伝えて通知を切るべきだったと考えます。自責思考の人は、問題は人のせいではなく自分のせいで起こるものであり、自身で解決可能だと考えるので、スマホを遠ざけるなどの対策を取ることができるのです。
こうした考え方ができる人は、問題を自分で解決して成長することができますし、ささいなことでいちいち気分を害することもありません。親に勉強しろと言われるのは、自分が本来勉強する時間にダラダラしていたせいだと考えることができますし、弟がゲームを始めても自分は勉強すればいいのだと思えるので、少しぐらい嫌なことがあっても気持ちを切り替えられるのです。
素直な性格で、自責思考の持ち主は、多少スタートラインで劣っていてもグングン成績を伸ばします。逆に、何事も疑ったり否定したりする癖があったり、何でも人のせいにしてしまいがちだったりする人は、必要な行動を取れず、成績も上がりません。
素直でない人や他責思考の強い人が今すぐ性格を変えることは難しいですが、まずは自分にこうした傾向があることを知ることが改善へ向けた第一歩です。そうすれば、今の自分は他責思考に陥ってしまっていると気づくことができます。否定したい気持ちはあるけれどまずは受け止めてみようとか、自分で改善できることはないか、と立ち止まってみることで、少しずつ変わっていくことができるはずです。
今まで本気で勉強に取り組んでこなかった人は、自分がそんなに長時間、勉強できるのだろうかと不安に思うかもしれません。しかし人間には新しい環境に適応する能力があります。例えばダイエットを始めた人が最初の3~4日は空腹に苦しんでも、それを過ぎると適量の食事で満足できるようになったとか、おやつが欲しくなくなったというのはよく聞く話です。
自分には無理だと決めつけたりせずに、とにかくやってみることです。そこから自分の新しい可能性が見えてくることもあるはずです。
菅澤 孝平
シンゲキ株式会社 代表取締役社長