いまの人事院勧告と公務員の給与体系が抱える課題
ただし、今日、この人事院勧告の制度も課題を抱えています。
たとえば、現行のラスパイレス比較で用いられている4つの指標(「役職段階」「勤務地域」「学歴」「年齢階層」)は、正社員として終身雇用され年功序列という旧来のモデルケースを前提としているとの指摘がなされています。公務員の雇用形態・働き方が多様化し、任期付き、非正規雇用の公務員も存在するなか、十分に対応しきれていないのではないかということです。
また、公務員の人材不足が問題化しており、優秀な人材を確保するには、「民間準拠」という従来の考え方から転換する必要があるのではないかとの指摘もあります。一つの現れとして、人事院の発表によれば、日本の最高学府である東京大学からの国家公務員採用総合職試験の合格者が、2013年は454人だったのが2022年は217人、2023年は200人を切り193人へと大幅に減っています。
人事院自身も、2022年の人事院勧告において、以下の課題があることを記載しており、上記の課題に対する危機感がうかがわれます。
・初任給や若年層職員の給与水準を始めとして、人材確保や公務組織の活力向上の観点を踏まえた公務全体のあるべき給与水準
・中途採用者を始めとする多様な人材の専門性等に応じた給与の設定
・65歳までの定年引上げを見据えた、60歳前の各職員層及び60歳を超える職員の給与水準(給与カーブ)
・初任層、中堅層、ベテラン・管理職層などキャリアの各段階における職員の能力・実績や職責の給与への的確な反映
・ 定年前再任用短時間勤務職員等をめぐる状況を踏まえた給与
・ 地域手当を始め、基本給を補完する諸手当に関する社会や公務の変化に応じた見直し
人事院勧告は一般職の公務員の給与等に関するものですが、事実上、首相・閣僚といった特別職公務員の給与等にも影響を及ぼすものです。いわば、公務員の給与体系の全体のあり方を決定づけるものになっているといえます。
その人事院勧告が様々な課題を抱えているところに加えて、今回の首相・閣僚の給与の引き上げの件が物議を醸しているということです。今後、公務員の給与体系の全体が、人事院勧告のあり方も含め、変革を迫られていくことになりそうです。
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