(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

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【“プロ”に聞く!インド経済】

「インドの高成長は続くのか?」

 

⇒短期的なセンチメント改善に加え、インフレの落ち着きや積極的な財政、海外からの直接投資で長期的にも堅調。

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景気センチメントは大幅に改善

●インドの製造業購買担当者景気指数(PMI)、サービス業PMIは10月時点でも、改善・悪化の分岐点である50を大幅に上回り、総合PMIは58.4と高水準です。アジア域内でもインドのPMIは群を抜いて高水準にあります。後述するように、政府は公共投資に潤沢な予算を配分していることから、投資がけん引する形で景気センチメントが大幅に改善していると思われます。また、短期的な上振れがあるものの、消費者物価上昇率は概ねインフレターゲット(2~6%)に収まるようになっており、この点は家計の購買力を上昇させることで堅調な消費を生み出しています。インドの財輸出・輸入のGDPシェアはアジア域内で低い上に、中国との貿易シェアが低いことから中国の景気低迷の影響を受けにくいという体質も指摘できます。

 

[図表1]インドのPMI

インフレはターゲット内へ

●消費者物価上昇率は短期的には野菜価格の急騰の影響に左右されています。7~8月には、害虫被害を受けたトマト価格の急騰によって、消費者物価上昇率はインフレターゲットを上回りました。10月下旬以降、夏場の作付けの遅れから玉ねぎの供給が減少し、玉ねぎ価格が急騰しています。そのため、11~12月には消費者物価上昇率はターゲット上限近辺まで加速するリスクが高まっています。一方、これまでの一連の利上げが奏功して、過度に強かった需要をインド準備銀行は適度に管理できているため、食料品・燃料を除いた消費者物価上昇率は安定しています。この点を考慮すると、今後も一部の野菜価格が一時的に高騰する局面があるにせよ、消費者物価上昇率が傾向的にターゲット上限を上回るリスクは限定的と思われます。他方、インドは輸入に占める原油のシェアが高く、中東情勢を受けて原油価格が急騰する場合には期待インフレ率が上昇しやすいため、金融市場ではトリプル安(為替減価、債券安〔利回り上昇〕、株価下落)への警戒が必要です。

 

[図表2]インドの消費者物価上昇率

積極的な財政政策を展開

●モディ政権は中長期的には財政規律を重視する姿勢を見せている一方、2023/24年度の予算案では財政赤字のGDP比を5.9%と高めに設定しました。内訳を見ると、公共投資に関係の深い資本支出(歳出予算の2割強)に対して、2022/23年度の政府着地予想比で37.4%増という巨額の予算を配分しました。道路に関しては25.4%増、鉄道に関しては50.8%増となっています。一方、補助金(歳出予算の1割弱)に対して2022/23年度の政府着地予想比で28.2%減となっています。モディ首相が所属するBJP(インド人民党)は国会下院で単独過半数の議席を保有しているため、圧倒的な指導力を握っています。特に選挙における貧困層に対する政策では補助金給付の増額は有効であり、2024年前半に行われるとみられる総選挙を控えている状況では、政府が補助金を予算超えで配分する動機は強いといえるでしょう。この点は短期的に財政赤字の拡大要因となりますが、同時にBJPが次期総選挙でも与党の地位を維持する可能性を高めやすいともいえます。

 

[図表3]インド政府予算の推移

長期的に堅調な資本流入が見込まれる

●米中対立が深刻化する状況で、インドの外交パワーは相対的に増しています。民主主義国家である米国は社会主義国家である中国に対抗するために、同じ民主主義国家であるインドと協力関係を強化する強い動機があるからです。このようなインドの外交パワーの向上は外国企業・外国人投資家にとって魅力的な要素であるため、中国から直接投資・証券投資が引き揚げられる場合、インドに向かいやすくなっています。

 

●また、インド政府自身も製造業の発展を掲げた「メイク・イン・インディア」政策を推進するため、様々な優遇措置を外国企業に提示しています。その代表例が生産連動型優遇策(PLI)で、インドで製造された対象商品の売上高の増加分に対して一定割合を補助金として2020年から5年間支払われるという内容です。政府は新エネルギー自動車をはじめエレクトロニクス分野など高付加価値産業の誘致に力を入れており、実際に、台湾の鴻海精密工業(電子機器の受託生産を行うEMS企業の世界最大手)、米国のマイクロンテクノロジー(半導体メーカーの大手)などがインドでの投資計画を発表しています。

 

 

(2023年11月17日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

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※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インド経済「高成長は続く」と言えるこれだけの理由【三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジストが解説】』を参照)。

 

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