(※写真はイメージです/PIXTA)

第一次世界大戦後、内政にさまざまな変化の波が訪れた欧米諸国。『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者で河合塾講師の平尾雅規氏が、明暗がくっきりと分かれた各国の悲喜こもごもを解説します。

1920年代に入り、「大量生産、大量消費社会」が誕生

独り勝ちのアメリカは、空前の好景気に突入

最後にアメリカです。大戦でアメリカ本土は被害をうけず、総力戦で苦しむヨーロッパの連合国に大量の物資を輸出し、お金も貸しつけていました。戦後は空前の好景気となり、ニューヨークウォール街が世界金融の中心にのし上がります。 

※アメリカの工業生産は、1929年で世界全体の約4割を占めた

 

この1920年代、現代に通じる大量生産・大量消費社会が生まれました。メーカーが同一規格の商品を大量に生産し、購買力を高めた大衆がこれを購入する、「画一化」が進んだ社会とも言えますね。

 

その象徴が、ベルトコンベアを用いた組み立てラインで自動車を大量生産したフォードでしょう。ラジオ映画など新たなメディアで企業広告が展開されたことも、大衆の購買意欲を刺激しました。

※1920年代半ばには約500のラジオ放送局があった

 

割賦販売(いわゆる分割払いのことで、商品代金を複数に分けて支払う)が普及して、高額商品にも手が届くように。

 

大衆には映画に加え、ジャズやプロスポーツなどの娯楽も根づいていきました。ウォルト=ディズニーがミッキーマウスの映画を製作したのが1928年で、メジャーリーガーの大谷翔平選手が事あるごとに比較されるベーブ゠ルースの全盛期も1920年代。この時期のアメリカが100年後の日本に及ぼしている影響たるや恐るべし、ですね。

 

アメリカ国内では、移民排除の動きが目立ち始める

一方この時期、アメリカ合衆国を建国以来支えてきたイギリス系白人(WASP)の価値観が幅を利かせて社会は極度に不寛容になり、異質なモノは徹底的に攻撃されました。

※White,Anglo Saxon

 

禁酒法は WASP の「P(プロテスタント)」の勤労を奨励し禁欲を重視する価値観から制定されたものですが、これにも大戦が影を落としています。

※ここではカルヴァン派を指す

 

大戦中、大切な食糧である穀物をビールなどにすることが「浪費」と批判され、しかもビール醸造業者には敵国ドイツ出身者が多かったんですよ。

 

イタリア移民2人が強盗殺人事件の容疑者として逮捕され、証拠不十分で死刑になったサッコ・ヴァンゼッティ事件には、WASP と相いれない移民に対する負の感情が見てとれます(ロシア革命の影響で反共の風潮が強くなっており、2人が無政府主義者であったことが偏見に拍車をかけた側面も)。

※なお2人とも、大戦において徴兵を拒否している

 

日本からの移民を禁じた1924年の移民法しかり。アジア人への風当たりも強くなりました。

 

 

平尾 雅規

河合塾

世界史科講師

 

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※本連載は、平尾雅規氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる世界史

大人の教養 面白いほどわかる世界史

平尾 雅規

KADOKAWA

「なぜ、戦争や紛争が絶えないのか?」「なぜ、国によって考え方・風習・生活が違うのか?」 ……答えは高校時代に習った世界史の授業のなかにあったはずなのに、大人になったいま、その答えがすっぽりと抜け落ちていません…

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