(※写真はイメージです/PIXTA)

芸能人など有名人が「年の差婚」をして話題となることがありますが、年の差婚の夫婦の場合、特に老後の資金計画は入念に練る必要があります。本記事ではAさんの事例とともに、年の差婚の厳しい現実について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。

年の差婚の厳しい現実

年の差婚をした人達が、その後ライフプランに問題がなく生活していけるかどうかは世帯年収がどのくらいあるか、その年収がどのくらい続くか、こうした点が命運を左右するでしょう。

 

しかし現実にはお金だけではありません。事例では18歳の年の差があるケースですが、25歳、30歳という年の差の夫婦も存在します。また、妻が年上のケースもあります。

 

年の差から考え方や感性の世代ギャップもあるでしょう。人生経験に差があることで物事の受け止め方の成熟度も異なってきます。出産にも影響があることはいうまでもないでしょう。その年齢以外の「違い」が夫婦関係の破綻に繋がる確率はどれほどあるのでしょうか。

 

米アトランタにあるエモリー大学経済学部の教授、アンドルー・フランシス氏とユーゴ・ミアロン氏が3,000人を対象に実施した調査(‘A Diamond is Forever’ and Other Fairy Tales:The Relationship between Wedding Expensesand Marriage Duration)をもとに、ミシガン大学のデータサイエンティストであるランダル・S・オルソン博士が分析し、結果を2014年11月7日に発表しています。

 

それによると、夫婦の年齢が1歳違えば、同年齢の夫婦と比べて離婚率が3%上昇し、年齢差が5歳になると18%、10歳差では39%、20歳差では95%、30歳差では172%高くなると推測しています。

 

オルソン博士は「パートナーの親になるほどの年齢である場合、結婚生活に問題が生じる可能性があります」と述べています。その確率の数字は推測であるため横に置くとしても、年齢差の拡大と離婚率の増加は有意な相関関係があるとされます。

年の差婚の場合に意識しておくべきこと

ここではあくまでもお金に関わることに限定してお話をします。年の差婚(ここでは10歳以上の年齢差を指します)を検討しているとき、老後破綻を防ぐために意識すべきことにはなにがあるでしょうか。

 

世帯年収の継続性を確認する

年の差婚の経済的な問題は、年上のパートナーがリタイアしたときに顕在化します。年上のパートナーの収入が公的年金だけになったときに、一方のパートナーがまだ就労し収入がある状態でなければなりません。収入が安定して継続できなければ、老後の生活は一気に苦しくなります。

 

老後に貯蓄が必要

年上のパートナーがリタイアしたときに、公的年金と一方のパートナーの収入だけでは生活が困難である場合、金融資産を取り崩す必要があります。リタイア時期までにいくら貯蓄しておくべきかはFPに相談すると計算してもらえます。

 

目標を達成するためにつみたてNISAなどを取り入れるべきかは検討する事項のひとつですが、無理な投資によって「自動車が現金で買えない」となっては本末転倒です。また取れるリスクの限界も各家庭で異なります。金融業者の勧誘を鵜呑みにせず、資産運用の精密なプランニングが必要です。

 

子供の計画は慎重に

特に妻が大きく年上の場合は、出産を急ぐケースがあります。しかしお金の面から考えて無理がないか冷静に判断すべきです。女性が年上の場合の年の差婚であっても、上記のように収入の継続性が大切です。

 

「出産したから退職して子育てに専念する」ということは難しいかもしれません。また、退職時に子供が何歳なのかによっては、子供をもうけない判断も必要になります。現代の日本社会では、教育費は住宅購入に次ぐ重い負担となっています。

 

住宅ローンは定年退職までに完済する

上記のことと関連しますが、年上のパートナーがリタイアしたときに住宅ローンの残債があると、家計の収支が悪化してしまいます。どちらかのパートナーが既に自宅を購入済みでない限り、あらたな借入時には慎重に返済計画を練るべきでしょう。

 

年上のパートナーの介護は避けられない

18歳差の場合、年上のパートナーが80歳になったとき、一方のパートナーはまだ62歳です。職業によっては定年退職をしていない年齢で、配偶者の介護を担うのは現実的でしょうか。もしかしたら、年下のパートナーは自分の親の介護も必要になっているかもしれません。体力的にも時間的にも相当な苦労をすることが想像できます。

 

※本記事は、FPの長岡理知氏のもとへ実際に相談のあった出来事をベースにしたものですが、登場人物や設定などはプライバシーの観点から変更している部分があります。また、実際の家計相談の現場では、論点が複雑に入り組むことが多々あり、すべての脈絡を盛り込むことは話の流れがわかりにくくなります。このため、現実に起こった出来事のなかで、見落とされた論点に焦点を当てて一部脚色を加えて記事化しています。

 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表FP

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※プライバシー保護の観点から、実際の相談者および相談内容を一部変更しています。

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