根深い「女性と貧困」の問題
さらに、「女性」にクローズアップしてみましょう。近年、女性と貧困を結びつけるデータには事欠きません。
たとえば、
1.女性は、生涯を通じて、男性よりも貧困に陥りやすい
2.配偶者がいない女性は貧困に陥りやすい
3.日本では、他の先進国と異なり、母子世帯の母親が仕事をしていても、貧困から脱出するのは難しい
など、ジェンダーに起因する不平等を示すデータがたくさんあります。
とくに、いわゆる「シングルマザー」の貧困問題がクローズアップされています。統計的に、離婚後に親権を持つのは女性である場合が多いのですが、厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、令和2年の母子世帯の平均年間収入(母自身の収入)は、272万円となっています。
OECD(経済協力開発機構)における他国のひとり親世帯の貧困状況のデータと比較しても、日本は極めて厳しい状況が続いていることがわかります。
さらに、離婚後に養育費を得ている母子家庭は、半数に満たない状況です。厚生労働省の同調査によると、養育費の取り決めをしていない母子世帯は52.2%。「現在も養育費を受けている」という母子世帯は28.1%にすぎません。
「幸せ!ボンビーガール※2」は、お金がなくても幸せに暮らそうということをコンセプトにしたバラエティー番組です。貧乏でも幸せな人生を送る女性を紹介しています。いわゆる「プア充女子」でしょうか。
……しかし、本当の貧困とは、そのレベルではないように思います。もっと重く、暗く、抜け出す道が見つからないような状態の場合もたくさんあります。「貧困は自己責任だ」という理屈が到底成り立たないような世界です。
『最貧困女子※3』は、貧困の地獄の中でもがき、性商売に埋め込まれる、可視化すらされていない多くの最貧困女子を取材しています。
そして、筆者は、取材対象の女性の1人に対し、「彼女は何も与えられずに育ち、適切な教育も受けず、容姿にすら恵まれず、友達もいない。この苦境から脱出しようと努力しようにも、努力をするベースがない。まるで泥の上で高くジャンプしようとあがいているようだ」と表現しています。
※2 日本テレビ系の情報バラエティ番組。2011年から第1期が放送され、2013年から2021年まで第2期が放送された。
※3 性商売で日銭を稼ぐ女性たちの抱えた苦しみを描く(鈴木大介『最貧困女子』幻冬舎新書)。
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