手取り127万円以下。性商売で日銭を稼ぐ…「家がない→職がない」日本の構造上の問題、「住まいと貧困」の悲惨な連鎖【中央大学法学部教授が解説】

手取り127万円以下。性商売で日銭を稼ぐ…「家がない→職がない」日本の構造上の問題、「住まいと貧困」の悲惨な連鎖【中央大学法学部教授が解説】

格差が広がるなか、住居が定まらないことで職が得られず、貧困から抜け出せないという負の連鎖に陥る「ハウジング・プア」が社会問題となっています。住居と貧困には密接な関係があるのです。本記事では、中央大学法学部教授である遠藤研一郎氏の著書『はじめまして、法学 第2版 身近なのに知らなすぎる「これって法的にどうなの?」』(株式会社ウェッジ)より、貧困層が抱える深刻な住居問題について解説します。

これからの日本に必要な「居住福祉」という発想

2015年9月、千葉県銚子市の県営住宅で、実の母親が、当時中学2年生の娘を絞殺するという事件が発生しました。報道番組などでも相当取り上げられていましたので、読者のみなさんの中にも、まだ記憶に残っている人が少なくないのではないでしょうか。

 

その母子は、困窮状態に追い込まれていました。母親の年収は、約100万円。国民健康保険料も未納状態でした。県営住宅の家賃は1万2,800円でしたが、長期にわたって家賃を滞納したため、行政による部屋の明け渡しの強制執行が行われることになっていました。強制執行の当日、この殺人事件が起きたのです。

 

私には、この事件は、単なるやり切れない不幸な事件というよりは、今まで説明してきたような、日本の構造上の問題が大きく関係しているように思えます。

 

日本でも、分野次第では福祉が相当程度発達しているように思いますが、居住の領域は、驚くほど市場原理主義が支配しています。しかし、果たしてそれでよいのかは、慎重に考えなければなりません。

 

「住む権利」というものが、アイデンティティー、人格形成、人間的価値の形成に関わる憲法上の基本的人権として、国家が保障すべきであるという考え方があるのは注目に値します。居住福祉的な発想です。

 

たしかに、居住空間を失うリスクが誰にでも内在するものであり、かつ、居住空間の確保というものが、われわれが生きていくうえで必要不可欠なものであるとすれば、今まで以上に社会全体で支える仕組みを構築していくという発想も、十分にあり得る選択肢ではないでしょうか。

 

 

遠藤 研一郎

中央大学法学部

教授

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

はじめまして、法学

はじめまして、法学

遠藤 研一郎

株式会社ウェッジ

「法的なものの考え方」を育てる法学入門、増補・改訂版! いざ!というときにもう困らない。ずっと関わる法学を、もっと身近に。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧