突如がん治療に口を出し始めた長男
一週間後の休日のタイミングで長男が北海道から数年ぶりに帰ってきて家族4人が集まりました。冒頭から長男は「突然治療が終了などおかしい」「医師が手抜きをしている」と訴え始めます。そしてそれにとどまらず、ただただそんな主治医のいいなりになっている3人に対し叱責する言葉を浴びせます。そしてなにより自分にひとことも相談もなく結論を出してしまっていることに対しても憤慨しています。
いままで3人でさまざまな負担に耐えながら頑張ってきたにもかかわらず、いままでほとんど関わってこなかった長男にいきなり責められ、とまどった3人。ただ、山内さん自身は自分ががんになってしまったせいでこうして家族が苦しい思いをしてしまっていること、また妻と長女はそばにいながらしっかりサポートできていなかったのではと、それぞれ自分を責める気持ちになってしまいました。
それに対し長男はいままでかかった病院が悪く、そんな病院の医師のいいなりになってはだめだと主張します。治療の選択肢はまだあるので可能性がある限り治療をするべきだといい、自分で調べてきたがん治療をパソコンで見せてきました。そこには、
■体中に転移した末期がんが消えた!
といった魅力的なキャッチフレーズが書かれていて、どうやら『免疫療法』というがん治療が存在するようです。
1クール400万円以上の免疫療法を勧める長男
いままで主治医からは一度も聞いたことがないような治療方法で半信半疑の3人でしたが、長男は「医師が年寄りで最新のがん治療を知らないからだ、もしくは自分でできない治療だからいじわるで教えてくれなかったのだ」といいます。
実際その免疫療法の内容を見てみると、自分の免疫を高めてがんを叩くというとても理にかなった治療方法という感じがして、さらに副作用が少ないならば受けてみる価値はあるのではという気にもなってきました。
ただ費用面ですが、3週間に1回通院しそれを5回で1クール、健康保険証がきかない自由診療のため1クール400万円以上とかなり高額です。1クール終了時に効果を確認して引き続き行うかどうか判断するようですが、続ける場合、再び同じ費用がかかるようです。
山内さんは自分の治療費で貯蓄をたくさん使うことは忍びなかったのですが、「いままで健康保険証がきいた安い一般的な治療しか受けなかったからよくなかったのだ」と長男はいいます。結局お金は貯蓄もまだあるということで長男の言い分を受け入れ、山内さんたち3人は後日そのクリニックの無料相談会に参加して治療を受けることとなりました。
がんがさらに悪化し、治療終了へ
山内さんは長男が勧めた免疫療法のために3週間に1回の通院を開始しました。1クールが終了したところで医師から今後治療効果が出てくる可能性があるという見解だったため、2クール目も受けることになりました。
ところが治療開始から5ヵ月を過ぎたところのある日、突然体調不良となり以前かかっていた病院に緊急入院となりました。
以前の主治医の診察を受け、これまでの免疫療法のことなどをすべて話したのですが、主治医からはいま受けている免疫療法は科学的根拠に乏しく効果も期待できない治療であること、数千万円の老後の貯蓄をすべて使い果たし裁判沙汰になっているものもあるなど問題点を指摘され、以前勧めたように在宅医療の体制をとって適切な緩和ケアなどを受けることをあらためて勧められました。
結局免疫療法は終了して主治医の勧めのとおり在宅医療に切り替えることにした山内さんですが、約5ヵ月の免疫療法期間で以前よりも体調が悪化、体力的にも弱ってしまい、楽しみにしていた旅行はもはや難しい状態となってしまいました。
「わけのわからない治療を強引に勧めて約1,000万円のお金をドブに捨て、おまけに父親の体調を悪化させた」と、今度は長女が長男を糾弾しはじめて争いとなり、それを妻がなんとか収めようと苦悩している姿を目にし、あらためて山内さんは「自分のがんのせいで」と、深い落胆の気持ちになってしまいました。
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