(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症が進み、金融機関から「判断能力が著しく低下している」と判断された場合、財産が凍結され、家族であっても預金等を引き出せなくなります。では、そうならないために、どのような事前対策ができるのでしょうか。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が、具体的な事例を交えて解説します。

元気なうちから準備したい「親の財産管理」

貴文さんのような失敗事例は、実際少なくありません。こうならないためにはまず、ご本人が元気なうちから親の財産管理をどうするか話し合っておく必要があります。

 

「認知症にかかった場合」「介護施設へ入居する場合」など今後発生しうる事態を想定し、費用はどのくらいかかり、どのように捻出するのかしっかり話し合って取り決めておくべきです。

 

そのうえで講じることのできる手段は、「認知症になる前に利用できる制度」と今回の貴文さんの事例のように「ご本人が認知症になってから利用できる制度」の2つがあります。順番にみていきましょう。

 

認知症になる“前”に利用できる「民事信託(家族信託)」

認知症になる前に利用できる制度としては、「民事信託(家族信託)」があります。これは、信頼できる相手に財産を託す仕組みです。

 

民事信託を使えば、ご本人でなくとも財産の一部を管理することができたり、家族が管理人となって家族間で資産を管理することが可能です。また、管理者への報酬の支払いは不要のため、気軽に利用できる制度といえます。

 

ただし、民事信託というのは「信託契約」という契約に基づいて利用するものですので、認知症になってから(=本人の判断能力が落ちてから)では利用することができません。

 

また、家族間の信頼関係をうまく築けていないなどして本人に「(元気なうちから)自分の資産を誰かに管理されたくない」と拒否されてしまった場合、利用が難しくなってしまうでしょう。

 

認知症になってから利用できる「成年後見制度」

認知症になってから利用できる制度としては、「成年後見制度」があります。今回の事例のように口座が凍結されてしまった場合であっても、この制度の利用することで凍結を解除してもらうことが可能です。

 

ただし、成年後見制度の場合、必ずしも家族が後見人に選ばれるわけではないため注意が必要です。専門家などの第三者が後見人になった場合、月額報酬を支払う必要があります。

 

また、裁判所に成年後見制度の申し立てをする際には、手続きの手間や費用も発生します。

 

◆まとめ

このように、認知症を患った親の財産を守るためには「民事信託」と「成年後見制度」という2つの制度が存在します。

 

どちらを利用するかについてはご家族で話し合い、個々の事情にあったものを選ぶようにしましょう。

 

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加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所

代表司法書士

 

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