(※画像はイメージです/PIXTA)

首相や閣僚等の「特別職公務員」の給与を引き上げる法案が物議を醸している。多くの批判を受け、松野官房長官は、法案が成立したとしても増額分を「国庫に返納」する方向であると表明した。端的に法案自体を撤回すべきとの意見もあるが、実は、制度上そうせざるを得ない事情も見え隠れする。そこで、本記事では、特別職公務員の給与の決まり方とその課題について、一般公務員の給与にも触れながら解説する。

「公務員給与の決め方」の今後の課題

ここまで紹介してきたように、特別職公務員の給与は従来、一般職公務員の給与に準じて定められてきている。そして、一般職公務員の給与については、「民間との格差を埋める」という観点から「人事院勧告」という制度に依拠している。

 

しかし、特別職公務員の給与については、75の職種のすべてについて、一般職公務員に準拠した扱いをするのが適切かどうかという問題がある。すなわち、働き方や職務内容において、人事院勧告の「民間準拠」という考え方が必ずしも妥当しない職種があるのではないかということである。

 

また、人事院勧告についても、以下のような課題が指摘されている。

 

【人事院勧告の課題】

・終身雇用制度を前提としている

・非正規雇用の職員への目配りが不足している

 

すなわち、ラスパイレス比較において用いられている「役職段階」「勤務地域」「学歴」「年齢階層」といった指標は、正社員として終身雇用され定年まで勤め上げるという、旧来のモデルケースを前提としている。したがって、今日の多様な働き方に必ずしもマッチしなくなってきているということが指摘されるようになっている。

 

人事院も、2022年の人事院勧告において、以下の取組が必要であると認めていた。

 

・初任給や若年層職員の給与水準を始めとして、人材確保や公務組織の活力向上の観点を踏まえた公務全体のあるべき給与水準

・中途採用者を始めとする多様な人材の専門性等に応じた給与の設定

・65歳までの定年引上げを見据えた、60歳前の各職員層及び60歳を超える職員の給与水準(給与カーブ)

・初任層、中堅層、ベテラン・管理職層などキャリアの各段階における職員の能力・実績や職責の給与への的確な反映

・ 定年前再任用短時間勤務職員等をめぐる状況を踏まえた給与の設定

・ 地域手当を始め、基本給を補完する諸手当に関する社会や公務の変化に応じた見直し

 

この内容からは、前述した「働き方の多様化」への対応に加え、優秀な人材をいかに確保するかという課題もうかがわれる。

 

今回の件は、首相・国務大臣の給与にとどまらず、公務員全体の給与の決め方について、今後検討すべき様々な課題を浮き彫りにしたといえそうである。

 

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