「申告漏れ」にはレベルがある…最悪は「塀のなか」へ
一口に「申告漏れ」といっても、レベルがあります。そのレベルに応じて、ペナルティである「追徴課税」も様々です。単なるミスならばペナルティは比較的軽くて済みますが、悪質な場合には非常に重い税金を払わされるハメになります。
さらに、悪性がきわめて高い場合には、刑事罰の対象となります。所得税法238条では、「10年以下の懲役」「1,000万円以下の罰金」のいずれか、または両方が課されることになっています。最悪の場合は刑務所に入らなければならないということです。なお、罰金刑は税金のペナルティである「追徴課税」とは別に科されます。
以下、「追徴課税」の種類と内容について解説します。
「単なる申告漏れ」だけでも課される「延滞税」
まず、税務調査等で「申告漏れ」が発覚した場合、不足分の税額を支払わなければならないのは当然として、それに加えて利息にあたる「延滞税」が課されます。
延滞税には計算式がありますが、細かいので本記事では立ち入りません。2023年の延滞税の税率は以下の通りです。
・納期限後2ヵ月以内の期間:年2.4%
・納期限後2ヵ月超の期間:年8.7%
申告漏れが発覚した時期によっては、この延滞税だけでも大きな負担となります。「ついうっかり」であっても、最低限、延滞税は払わなければならないのです。
3種類の「加算税」
延滞税に加え「加算税」も課されることがあります。
「加算税」で重要なのは以下の3種類です(「不納付加算税」もありますが、特殊なものなので割愛します)。
【3つの主な「加算税」】
1. 重加算税
2. 過少申告加算税
3. 無申告加算税
以下、3種類の「加算税」について、最も重いペナルティである「重加算税」から解説します。
◆重加算税
重加算税は、「隠ぺい」または「仮装」を行って納税申告しなかった場合、あるいは過少申告した場合に課されるペナルティです(国税通則法68条)。
故意によるものであり、悪性がきわめて強いということで、重い税率が課されます。税率は原則として以下の通りです。
【重加算税の税率】
・無申告の場合:40%
・過少申告の場合:35%
また、過去5年間に重加算税、または次に説明する「無申告加算税」を課されたことがあれば、上記の税率にさらに10%が加算されます。
2023年3月に発覚したSNS上の「インフルエンサー」9名による合計約3億円の申告漏れの事件を覚えている方も多いと思います。あの事件では、申告漏れの額が約3億円で、追徴税額が総額約8,500万円でした。重加算税の比率が高かったとみられます。
なお、この事件が発覚したのは税務調査によるものですが、税務署の調査能力はきわめて高く、お金の動きについて確実に把握されると考えておくべきです。というのも、税務署は強力な「質問検査権」を持っています。
たとえば、本人の同意なくして銀行口座の取引履歴を調査できます。もし仮装や隠ぺいをしても、様々な状況証拠を積み重ねることで、どうにかしてお金の動きを把握しようとします。税務調査官は仮装・隠ぺいを見破る専門家なので、あらゆる手口を熟知しています。したがって、税務署がその気になれば「申告漏れ」や「仮装」「隠ぺい」は必ずバレると思っておくべきです。
税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法