個人金融資産の内訳に大きな違いがある日本とアメリカ
物価上昇によって、すでに資産の目減りが始まっています。しかし、ほとんどの人が、自分の資産を守るための行動を何も起こさず、手をこまねいているだけです。
日本人は資産を預貯金で保有している人が多いといわれますが、それは今も変わっていません。図表は、どんな金融商品で個人資産を保有しているのか、日本と米国で比較したものです。米国の個人金融資産は約62.16兆ドルで、1ドル=110円で換算すると、約6800兆円となります。それに対して、日本の個人金融資産は約1644兆円と、約4分の1にすぎません。
もちろん米国の人口が約3億人であるのに対して、日本は約1億3000万人と2倍以上の開きがあります。それにしても、個人金融資産で4倍の開きがあるのは、人口の差だけでは説明ができないでしょう。
イギリスの財政学者トーマス・グレシャムは、「悪貨は良貨を駆逐する」と言いました。金や銀の含有量の多い貨幣と少ない貨幣が同じ額面で流通していた場合、含有量が多い、つまり価値の高い貨幣を手元に残す人が増え、市場には含有量の少ない=価値が低い貨幣ばかりが流通するという法則です。
簡単にいえば「良いものよりも悪いもののほうがはびこりやすい」ということになります。資産運用においても預貯金で資産を保有する人が依然として多く、リスク資産で運用する人は一向に増えません。それは、預貯金で運用することが正しいのではなく、単に人数が多いために、正しいことのように見えているだけなのです。
【図表】個人金融資産の日米比較
日本では資産の半分以上を現金・預金で保有
資産の内容を見てみると、米国は預金・現金で保有している割合は約15%です。それに対して、株式で運用している割合が約22%、投信が約13%ですから、この2つを合わせたリスク資産での運用は約35%に上ります。
日本は、現金・預金が約53%と資産の半分以上を占めています。では、株式はどうかというと約9%です。このデータは2013年末のものですから、アベノミクスによって、すでに株価は急激に上昇していたはずです。それでも、株式の比率はこれだけ低いのです。
米国人は昔から個人も積極的に資産運用を実践してきました。それは、自分の年金は自分でつくるしかない、という意識が浸透しているからです。その結果が個人金融資産に4倍の開きをつくったのではないでしょうか。
さらに、初心者でも資産運用ができるといわれる投信でも比率は約5%にすぎません。銀行でも簡単に購入できるようになっていますが、それは個人金融資産の運用にあまり生かされていないようです。